国内

「表現の不自由展・その後」出展作家が語る表現の自由の矛盾

展示中止の波紋が広がっている(時事通信フォト)

「表現の不自由展・その後」をめぐる騒動が勃発して1か月たつが、政治家をはじめとする“外野”の声が喧しい一方、同展に作品を出したアーティスト自身の声を聞く機会は少ない。報道カメラマンの横田徹氏が、渦中にある出展作家の一人・小泉明郎氏に迫った。

 * * *
「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止騒動は、今もなお収まっていない。

 報道カメラマンである私自身、2016年に東京都現代美術館が開催したグループ展「キセイノセイキ」に、アフガニスタンやイラクで撮影した戦場の最前線の映像をまとめた作品「WAR不完全版」を出展した際、規制という壁にぶち当たった過去がある。

 これまで私は戦場取材の映像をテレビ等で発表してきたが、残酷な暴力シーンや遺体などの放送には、当然、制約が伴っていた。「キセイノセイキ」は私にとって初めての公立美術館での作品展示ということで、普段は発表できない映像素材を使い自由に表現できるものと思っていた。

 ところが、開催前にキュレーター側から「観覧する児童生徒への配慮」などを理由に作品の展示空間を年齢で区分するよう求められ、作品内容も変更せざるを得なくなった。その経験から、公の場で表現することの難しさや限界を実感している。

 映像作家の小泉明郎氏は、中止された「表現の不自由展・その後」の出展作家の一人だ。同展には、前述の「キセイノセイキ」で展示が不可だった皇室の写真をベースにしたコンセプチュアルな絵画作品「空気」を出品。タブーとされる“天皇”をテーマに作品を制作する小泉氏に話を聞いた。

「アートを作る時は、作品がどうすればより洗練された素晴らしいものになるかを考えます。その判断基準と、『社会の倫理』や『社会にとっての善』の判断基準は別のシステムです。

 さらにアートの役割には、社会で道徳的に良いとされているものを敢えて崩す、タブーに挑戦する、疑問を呈する、といった側面が含まれます。不道徳であることによって作品の強度が上がったり、一般的な常識を壊すことによって『人間の個』や『人間の多様性』がより際立ったり、ということがあり得るのです」(小泉氏)

 一方で、アートだから何でも許されるわけではない、とも小泉氏はいう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト