なお、8月には2年前に出演したEテレ『おはなしのくに』の「さるかにがっせん」も再放送された。この番組は一人芝居。なんと猿時は、サルとカニのみならず、のちに悪いサルを凝らしめるカニのこどもたち(ちなみに千匹います)や助っ人の栗や蜂、うすや牛のふんの役までひとりでこなしたのである。野太い声でうすのどっしり感を出したかと思ったら、どこか空気の抜けたような牛のふんの声を出す。猿時の演技力炸裂であった。

 こうしてひと夏、猿時を見続けて、私はある人を思い出した。その人と猿時には「歌がうまく、歌手としても活躍」(猿時も港カヲルの名前で司会・ボーカルを務める)、「誰かに振り回される演技がたまらなく面白い」(暴走するまあちゃんにカクさんは振り回される)、「どすどす走る」「どう見ても汗かき」「慌てると声が裏返りそうになる」などの共通点がある。

 その人の名前は、コント55号の坂上二郎。私はコントの中で二郎さんを振り回し続けた欽ちゃんこと萩本欽一と共演した最後の舞台を見たが、大病後の二郎さんは演技どころか、にこにこと舞台を通り過ぎるだけ。それでも観客は大爆笑、大拍手。その愛されぶりに感動してしまった。

 出てくるだけで大拍手。その域に達するのは簡単じゃないが、いつかそんな姿を見てみたい。猿時の番です!

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