真行寺出演の劇団クセック公演「フエンテ・オベフーナ」(ロペ・デ・ベガ作)

真行寺出演の劇団クセック公演「フエンテ・オベフーナ」(ロペ・デ・ベガ作)

──私生活では離婚されるなど、波乱万丈な時期もあったようですが、芝平での暮らしなど様々な実体験を経て、芝居にも深みが増したのではないですか?

真行寺:今まで生きてきて幸せだった事や悲しかった出来事を思い出して演じることはありますが、それは他の役者さんもそうしている人は多いと思います。それよりも、演技力という点で大きかったのは、今から9年ほど前に、名古屋に本拠地のある「劇団クセックACT」の存在を知ってからです。

 この劇団は、設立以来一貫してスペインの劇作家の作品ばかりを取り上げ、翻訳家も演出家もみんなスペイン芸術に精通している方たちなのですが、舞台の造形美がとにかく美しいんです。それは“動く絵画”と言われているほどで、私も初めて公演を観に行ったとき、あまりの質の高さと演出の美しさに衝撃を受けました。

──言葉で表現するのは難しいと思いますが、どんな演出方法なのでしょうか。

真行寺:例えば、舞台上に長い木のテーブルだけがある公演では、ラストシーンでこの木のテーブルが一瞬にしてシーソーに変化し、先端にまたがっているヒロインの衣装が剥がされて真っ赤な下着が露わになります。そこで生殖行為を表す身もだえる演技が始まります。そうしたイマジネーションに訴えてくる計り知れない演出法です。

 日本の演劇界は今でもリアリズム手法が主流で、極端な人生を描こうと思ったら現実に起こりうる修羅場を切り取らなければドラマになりませんが、劇団クセックの芝居はリアリズムを演じてはいけません。いわば現実とかけ離れた虚構の世界を疑似体験しているような感覚です。

──クセックの公演には真行寺さん自身も出演されていますが、観劇に行ってオファーを受けたのですか?

真行寺:いえ、自ら「入れてください」って志願して、3年間勉強させていただいたんです。それまでの私は、与えられた役柄を自分に憑依させるのか、それとも自分が役に憑依するのかで悶々としていました。また、悪女を演じたら、人様からそのイメージで見られることに躊躇もあったのですが、クセックの虚構世界に没入して、そうした悩みが一気に解けたんですよね。

 ただ、稽古はとても厳しかったです。役者さんの発声法も独特で、地を這うような大きなうめき声を出したりするのですが、私が一言発するたびに演出家に「違います」、「それも違います」と言われ続けた3年間でした(苦笑)。喉を枯らして泣く思いで公演初日を迎えたこともあります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン