夏井さんに「才能あり!」と句を褒められた室井さん
〈『ヤットコスットコ女旅』には友人たちと故郷の富山で盛り上がる一編もある。「まずは生ビールで乾杯し、ブリ刺しやホタルイカの酢味噌で日本酒、さらに氷見牛や黒部名水ポークの串焼きが出てきたので赤ワインを頼む。と、ここで思いがけないプレゼントが。何と、普通のコップ大の小さなワイングラスに、赤ワインがなみなみと注がれて登場~ッ!」。が、この後、意外な展開に──。〉
室井:先生の旅の楽しみはなんですか?
夏井:お酒と美味しいものを少し食べる、かな。美味しいものをちょっとだけ食べて、美味しいお酒をしっかり飲む(笑い)。
室井:普段から、俳句のタネみたいなものを探そうという気持ちがちゃんとベースにあるんですか? それとも…。
夏井:吟行会といって、仲間と一緒にどこそこに出かけて、飲み食いもしながら句会もするという時は、朝からギアを入れますね。朝出発するところから吟行なので、ギアを上げてどんどん材料を仕入れていく。
室井:それは、何かメモ帳みたいなものを持って書き留めるんですか。
夏井:句帳に書きます。句会で、今日は何句出しって決められてることがあるから、その数は作らなきゃいけない。でも、普通の旅をしている時は、普通にぼーっとしてますよ。何かふっと気になるものが飛び込んできた時だけ書く。3句までは覚えておけるんだけど、4句目が思い浮かんだら最初の1句を忘れるから(笑い)。ちゃんとメモをして、またぼーっとする。そんな感じです。室井さんはエッセイを書かれる時は、どんな感じなの? 当然旅先でも書かれるでしょう。
室井:私はいま、月に10本くらい締め切りがあって、一応女優の仕事もしながら、締め切りに遅れたことは全然1回もなくて。
夏井:ドキッ。すごい!
室井:起承転結のはっきりしたものなら苦労なく、わりとすぐ書けちゃう。いつもジャポニカ学習帳の作文ノートに書いてるんですが、あれは1ページ200字で、見開きに書くと400字。何文字って言われたら、最初からぴったり書ける。後は、それを清書して、旅先のコンビニからファクスで送るんです。
夏井:すごいなぁ。
室井:でも私、どうも文学的なことにはあまり向いてない気がして。
夏井:そんなバカな(笑い)。