ライフ

刃に粘着物がくっつかないはさみ 開発のきっかけは接骨院

粘着性のあるものがサクサク切れる『パーフェクトバリア』

 刃物の街・岐阜県関市のメーカーが考案したはさみ、『パーフェクトバリア』(刃渡り70mm、重さ81g。3800円。林刃物)が注目を集めている。粘着テープや湿布など粘着性のあるものがサクサク切れるこのはさみ。開発のきっかけとなったのは、社員が通う接骨院の先生の声だった。

『パーフェクトバリア』は、粘着テープやビニールテープ、両面テープ、湿布など粘着性のある素材を刃にくっつけずに切ることのできるはさみだ。開発したのは岐阜県関市にある林刃物。関市は、刀作りに必要な良質な土や松炭、水があることから、鎌倉時代以降、刃物の街として名を上げ、今でも包丁やナイフ、かみそり、はさみなどの産地として全国的に知られている。

 開発のきっかけは、同社の社員が通っていた接骨院の先生から、湿布やテーピング用のテープなど、粘着性のある素材を切るのに苦心しているという相談を受けたことだという。普通のはさみを粘着性のあるものに使用していると、だんだんと切れ味は落ちてしまい、すぐに買い替えが必要になってしまう。切れやすくて長持ちするはさみを作るために、2018年3月に開発がスタートした。

 一般的なはさみは、刃の表面にフッ素コーティングをした後に刃付けを行い、コーティングされていない刃部先端で紙などを切る。それゆえ、刃部先端は非粘着性でないため、粘着物にくっつきやすい。

 そこで、コーティング技術を工夫して、非粘着性の高いはさみを作れないかと考えた。注目したのは、膜厚が超薄い特殊コーティング。それまでフッ素コートのはさみのコーティングの厚さは数十ミクロンだったが、特殊コーティングの厚さはわずか1~3ミクロン。コーティング後も刃先の精度を維持することができるため、刃先までコーティングで覆ってしまっても、切れ味を損なうことなく、非粘着性が高められるのではないかと考えた。

 実際に試作品を接骨院の先生に試験的に半年間使用してもらったところ、湿布やテープを切るのに使い続けた結果、切れ味が劣化することなく快適に粘着性のあるものを切り続けられることがわかった。「一度湿布を切るのにこのはさみを使うと、切れ味が気持ちよくて、ほかのはさみは使えない」と先生のお墨付きももらった。

 粘着テープを切るためのはさみというと用途が限られていて、需要もニッチだと思うかもしれない。しかし、医療関係者のみならず、バレーボールなどテーピングの習慣があるスポーツをやっている人や、日常的に湿布を使っている人など、はさみのベタつきと日々闘っている人にとっては、ストレスなく使える『パーフェクトバリア』は欠かせないものになるだろう。

 刃物の街から生まれた確かな技術をぜひ体感してほしい。

※女性セブン2019年10月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン