この十数年で急速にタワマンが増えた武蔵小杉(時事通信フォト)
今後、タワマンの購入や居住を検討するのであれば、今回の台風で発生したようなリスクは想定しておくべきであろう。川や海のそば、あるいは標高の低いエリアのタワマンならなおさらである。
今回、浸水の被害を受けた武蔵小杉はここ十数年で急速にタワマンが増えたエリアである。優れた都心へのアクセスが評価され、急激に人気化していた。価格も上昇して、新築マンションの坪あたりの単価は、東京都の文京区とほとんど変わらなくなっていた。やや過剰な評価ではなかったか。
2年ほど前からは、駅のキャパオーバーが話題になっていた。朝のラッシュ時には「改札まで30分の行列」などといった報道が盛んに出ていた。じつのところ、今でもキャパオーバーの問題は解決されたわけではない。タワマンはその後も増え続けているので、むしろ潜在的な問題は深刻化していると言える。
今回、この武蔵小杉のタワマンエリアがじつは多摩川の氾濫で冠水しやすい低地であることが広く知られてしまった。茶色く濁った氾濫水の画像は、しばらく人々の脳裏に残るだろう。そういったことは当然ながら資産価値にも影響する。
あと1年ほどは、このエリアでの新築マンションの売れ行きが鈍るだろう。中古マンションの取引も激減しそうである。
その後、イメージが回復するか否かは分からない。2年ほど前に東京都江東区の豊洲エリアが、規定値以上の化学物質が検出されて話題になった。しかし、マンション価格への影響はほとんどなかった。化学物質による住民への実害がなかったからだ。
しかし、武蔵小杉では実際に電気やトイレが使えなくなって不自由な思いをしたタワマン住人たちが何百人もいる。豊洲と同じ尺度では測れないだろう。今後、数年以内にまた台風によって浸水被害を受けた場合は、かなり怪しいことになりそうだ。
だからこそ、多摩川の治水対策や各タワマンの災害対策が急がれる。