岡野弘彦は、宮中新年歌会始の選者となり、御用掛を二十年余務めた。戦後から変化していく天皇皇后の和歌もこの本の読みどころである。各章の活字から、岡野弘彦の魂が、花ふぶきのように舞い、鬼気迫ってくる。

 三重県と奈良県の接する山村にある若宮八幡神社の三十四代神主の子として生まれ、神主を継ぐべきか歌人として生きるかの葛藤もセキララに語られる。いままで書けなかった「かなしい村」の話。意を決して、祈りをこめて告白する終りの一章にも心うたれる。

※週刊ポスト2019年10月18・25日号

最後の弟子が語る折口信夫

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