ライフ

林真理子、作家へと導いた『風と共に去りぬ』を一人称で超訳

『風と共に去りぬ』を現代に甦らせた最新長編を上梓した林さん(撮影/浅野剛)

【著者に訊け】林真理子さん/『私はスカーレット I』/小学館文庫/600円+税

【本の内容】
 ヴィヴィアン・リー主演で映画化(1939年)され、作品賞をはじめアカデミー賞10部門を受賞するなど世界的大ヒットを記録した名作『風と共に去りぬ』。南北戦争時代のアメリカを舞台に、個性的な美貌と激しい気性を持つ主人公スカーレットの波乱にとんだ半生を描いたマーガレット・ミッチェルの長編小説を、林真理子さんが大胆に超釈。第1巻では、その美貌で青年たちの愛を一心に集めていた16歳のスカーレットが、アシュレとの恋に破れ、その当てつけに、結婚相手メラニーの兄チャールズと結婚するが…。来年春には第2巻が発売予定。

 中学2年の時に初めて読んだ『風と共に去りぬ』は、林さんにとっての「魔法の薬」、世界を変える一冊だった。

「今にきっと美人になって、スカーレットみたいなドレスを着て、レット・バトラーのような男性と激しい恋をするんだと、こんなド田舎の中学生であることを悲しみながら、本気で思ったんですよ」

 30年以上前、アメリカ国務省のプログラムで招かれた時も、小説の舞台であるアトランタを迷わず滞在地に選んだという。

 5年ほど前、『風と共に去りぬ』の新訳を依頼された時は、そのまま訳すのではなく、三人称で客観的に書かれた物語を、〈私はいわゆる美人、というのではないかも〉というスカーレットの視点で、大胆に書き換えることにした。

「改めてじっくり原作を読むと、スカーレットってまだ16歳なんですよ。子供ですから、知恵や計画もなく、行き当たりばったりなのも当たり前。作者のマーガレット・ミッチェルは時々、意地悪くスカーレットのことを書いたりするけど、彼女には彼女の言い分があるんだというのを、私は一人称で表現しようと思いました。南北戦争などの時代背景は書きにくくなりますけど、16歳が見聞できる範囲で書くように工夫しています」

 大好きなアシュレがメラニーと結婚することになり、スカーレットは面当てに好きでもないチャールズとスピード結婚する。結婚式の1週間後に夫は出征、病気で亡くなった後に、妊娠がわかる。波乱万丈のスカーレットの人生には、1巻だけでもこれだけのことが目まぐるしく起こるのだ。

「おしゃれをしてウエストを細く絞るシーンとか、女の人が好きなものがいっぱい詰まった小説です。タイプの違ういい男が2人いて、若い時は男らしいレットがよかったけど、優柔不断で何を考えてるのかわからないアシュレの良さもわかるようになりました。原作を読んだ人も読んでいない人も楽しめると思いますので、小説の面白さに我を忘れる、あの感じをぜひ味わってほしいです」

 スカーレットをニューヨークに行かせたら? と「続篇」の構想が出るほど、『風と共に去りぬ』にのめり込んでいる林さんである。

■取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2019年11月7・14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

一家の大黒柱として弟2人を支えてきた横山裕
「3人そろって隠れ家寿司屋に…」SUPER EIGHT・横山裕、取材班が目撃した“兄弟愛” と“一家の大黒柱”エピソード「弟の大学費用も全部出した」
NEWSポストセブン
犬も猫も嫌いではないが……(イメージ)
《ペットが苦手な人たちが孤立化》犬の散歩マナーをお願いしたら「ペットにうるさい家、心が狭い」と近所で噂に 猫カフェの臭い問題を指摘したら「理解がない、現代は違う」と居直る店も
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《模擬店では「ベビー核テラ」を販売》「悠仁さまを話題作りの道具にしてはいけない!」筑波大の学園祭で巻き起こった“議論”と“ご学友たちの思いやり”
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
浅田美代子(左)と原菜乃華が特別対談(撮影/井上たろう)
《NHK朝ドラ『あんぱん』特別対談》くらばあ役・浅田美代子×メイコ役・原菜乃華、思い出の場面を振り返る「豪ちゃんが戦死した時は辛かった」「目が腫れるくらい泣きました」
週刊ポスト
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン
5月6日、ニューメキシコ州で麻薬取締局と地区連邦検事局が数百万錠のフェンタニル錠剤と400万ドルを押収したとボンディ司法長官(右)が発表した(EPA=時事)
《衝撃報道》合成麻薬「フェンタニル」が名古屋を拠点にアメリカに密輸か 日本でも薬物汚染広がる可能性、中毒者の目撃情報も飛び交う
NEWSポストセブン
カトパンこと加藤綾子アナ
《慶應卒イケメン2代目の会社で“陳列を強制”か》加藤綾子アナ『ロピア』社長夫人として2年半ぶりテレビ復帰明けで“思わぬ逆風”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《2人で滑れて幸せだった》SNS更新続ける浅田真央と2週間沈黙を貫いた村上佳菜子…“断絶”報道も「姉であり親友であり尊敬する人」への想い
NEWSポストセブン
ピンク色のシンプルなTシャツに黒のパンツ、足元はスニーカーというラフな格好
高岡早紀(52)夜の港区で見せた圧巻のすっぴん美肌 衰え知らずの美貌を支える「2時間の鬼トレーニング」とは
NEWSポストセブン