芸にまじめで一途だが世の中を肌で感じることも大切にする古田

 芝居に賭け、芝居を愛して生きている古田新太。インタビュー内で〈最近は小劇場でさえわかりやすい芝居ばかりで、全然面白くないんです〉と手厳しく語っている。

「芸に対してまじめで一途な古田さんは、若手の俳優さんらにも慕われる存在ですが、印象的な言葉がありました。〈撮影が終わるとさっさと帰る役者がいる。彼らに言いたいのは、コンビニで弁当を買って家でくつろいでいる間に、外でとんでもなく面白いことが起こっているかもしれないぞ……ということ。夜の巷で大げんかが起こっているかもしれないし、それに巻き込まれることがあるかもしれない。役者はそうやって一瞬、一瞬、世の中を肌で感じて生きないとダメ〉だと」

『硬派の肖像』で、この2人の他にも遠藤憲一、蜷川幸雄、佐藤浩市、市川海老蔵、岸谷五朗、中井貴一ら表現者31人にインタビューした水田静子氏曰く、全員が何かしらの怒りを抱えていて、それがエネルギーの源になっていると感じたという。怒りや挫折といったドロドロとしたものに蓋をして、合理的に上手に生きられる人もいる。

 また、そうした生き方をスマートだと考えるのが昨今の風潮だ。だが、本当にそうだろうか。

「のほほんと、さほどの苦労をせずに生きてきた人にはないもの、それが怒りと挫折でしょう。怒りと挫折は背中合わせ。一流の表現者、一流の仕事師たちは、そのふたつをバネにして、餓え、葛藤しつつ道を切り拓いてきた。一見、“今風”に、格好よく生きている人たちには得られない、人生の厚みと深みでしょう」

 怒りと挫折を糧にしてあきらめず懸命に生きる硬派な男たち。日々、仕事をするなかで迷い、壁にぶつかったとき思い出すと、力をもらえるかもしれない。

【プロフィール】みずた・しずこ/静岡県生まれ。出版社・編集者を経て、フリーランスのインタビュアー・ライターとなる。幅広い媒体で芸能をはじめ、表現世界に生きる人々のインタビュー記事を執筆。単行本のプロデュース、執筆も手がける。また、作家としても活躍し、小説『喪失』にて第1回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞。現在、WEBインタビューサイト「人、語りて」の主宰として、発信準備中。

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン