ライフ

アメリカの「フェイクミート」市場が大盛り上がりな理由

植物由来の成分でつくられたベジタリアン向けハンバーガーのパティ(写真:アフロ)

 地球温暖化、人口爆発はグローバルな課題。その流れでいくと「代替肉」のブームが日本に到来するのも時間の問題かもしれない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

 * * *
「フェイクミート」市場が盛り上がっている。「ビヨンド・ミート」のパティを使った『ダイヤモンド・ザイ』11月号の別冊付録「いま買いの『米国株』100」で「将来の10倍株」銘柄に取り上げられ、並び評される「インポッシブル・フーズ」もアメリカでバーガーキングと提携。日本では想像できないほどの盛り上がりを見せている。世界の市場規模は2022年までに6000億円市場になるという試算もあるほどだ。

 そもそも「フェイクミート」とは何か。日本語の響きとして「フェイク」というと「偽物」を指すネガティブニュアンスだが、「フェイクフード」は単に味や食感を肉に似せた代替肉を指す。大豆やエンドウ豆などを使った植物由来のアイテムを指すと考えていい。動物の細胞を培養してラボで作る”培養肉”も開発が進められているものの、コストや倫理上の課題もあり、現時点で市場に出回っているのは植物由来のもの。

 冒頭で触れた2社も、現状では植物由来のフェイクミートメーカーで、健康的なイメージを打ち出したいファストフード業界から熱視線を受けている。

 2009年創業の「ビヨンド・ミート」は8月には米アトランタのケンタッキー・フライド・チキンで「ビヨンドフライドチキン」として骨なしチキンとナゲットが試験販売されている。今年5月にはナスダック市場に上場し、2億4060万ドルの資金調達に成功した。上場時の時価総額が14億6000万ドルという文字通りの注目株だ。

 もうひとつの雄、「インポッシブル・フーズ」もバーガーキングの「インポッシブル・ワッパー」のパティにフェイクミートを提供している。こちらも7億5000万ドル以上の資金調達に成功していて、企業規模は20億ドル超とも言われる。

 ちなみに日本で2000億円程度の時価総額の企業を探すと、吉野家ホールディングスが時価総額で約1600億円(牛丼業態だけでなく、はなまるうどんや京樽といった他業態も含めたホールディングス全体の数字)。まだ発展途上のはずのフェイクミート企業はその上を行っている。

 なぜ、アメリカでフェイクミート関連企業がこれほどまでに評価されているのか。そこにはいくつかの要因がある。

◆フェイクミート関連企業が躍進

 第一に挙げられるのが、アメリカ人の健康問題だ。フェイクミートにハンバーガー業界が食いついていることからもわかるように、アメリカでは大衆層の「食と健康」が長年、社会的課題となっていた。

 1968年、ときの米フォード大統領は「栄養と所要量に冠する上院特別委員会」の議長に貧困問題や食糧問題に詳しかったジョージ・マクガバンを任命した。通称マクガバン委員会とも言われたこの委員会では、19世紀以降のアメリカの病気と食生活の変遷をたどり、世界中の食生活と疾病の関係性を徹底的に調査を行う。

 課題とされていた「栄養と食」問題に取りかかり、9年かけて1977年に通称「マクガバン・レポート」と言われる5000ページを上回る調査結果を報告する。そこにはガンや心臓病、糖尿病の原因が食生活にあること、栄養と食べ物こそが医学の柱であることが指摘されていた。

関連記事

トピックス

真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
今年の”渋ハロ”はどうなるか──
《禁止だよ!迷惑ハロウィーン》有名ラッパー登場、過激コスプレ…昨年は渋谷で「乱痴気トラブル」も “渋ハロ”で起きていた「規制」と「ゆるみ」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領と高市早苗首相(写真・左/Getty Images、右/時事通信フォト)
《トランプ大統領への仕草に賛否》高市首相、「媚びている」「恥ずかしい」と批判される米軍基地での“飛び跳ね” どう振る舞えば批判されなかったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン