父の急死によって認知症の母(84才)を支える立場となった『女性セブン』のN記者(55才・女性)が、介護の日々を綴る。今回のテーマは「お酒」だ。
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私が社会人になって両親と疎遠になった頃、母と朝まで飲み明かしたことがある。母が酒豪だったこと、酒が心の垣根を取り払うことをその時初めて学んだ。要介護になった今も、母は“いい酒”を楽しんでいる。
◆「ちょっと座りなさい」初めて母と飲んだ夜
私が大学生の頃、カジュアルな居酒屋などがたくさんできて、女子も気軽に外で酒を飲むようになった。私もよく学校帰りに友人たちと飲みに行き、その後彼らの下宿でまた飲んで語り明かすという、青春群像劇のような気分を大いに謳歌した。飲みすぎの失敗を経験したのもこの頃。トイレの神様に泣いて謝り、正しい飲み方を誓ったものだ。
そんなふうだったから両親とは疎遠になった。社会人になっても実家で面倒を見てもらう後ろめたさを感じつつ、ほとんど親を顧みず、会話もない日々だったが、ひとつだけ母との強烈な思い出がある。
それはたしか正月休みだった。昼間から酒を飲んでいた父は早々に寝てしまい、テレビにも飽きて時間を持て余していると、母が「ちょっとNちゃん、座りなさいよ」と言ったのだ。
「また小言か…面倒だな」と思ったが、逃げ場もなく覚悟を決めて食卓に座った。
すると母がおせちの残りと漬けもの、日本酒の一升瓶をドンと置き、
「Nちゃん、結構外で飲んでるみたいねぇ」
と、始まった。
恐る恐る盃をもらうと…それが意外にも愉快だった。