日本人は嘘をつかない、約束を守ると海外ではよく言わてきたが、最近の国内の様子を振り返ると、どうもそうは言っていられないのではないか。天網恢々疎にして漏らさず、どんな悪事も最後には露見するものだという意識で暮らす人が多い社会だったはずが、気づけば連日、誰かが誰かを騙したというニュースばかりだ。ライターの森鷹久氏が、SNSにはびこる個人間融資を利用した詐欺事件から、少女や小学生が詐欺事件の当事者となったのはなぜかについてレポートする。
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「個人間融資詐欺」と言われてもピンと来ない人の方が多いだろう。
筆者はこの「個人間融資」について取材し、過去に数度記事を書いてきた。今一度おさらいをすると個人間融資という言葉はその名の通り個人間での金の貸し借りのことだが、ここで指しているのは友達や知人間で金を貸し借りするのとは違い、継続的に金を貸す金融業法違反行為のことだ。法律違反なのだが現実には、ネット検索すると驚くほど多くの「個人間融資」情報が出てくる。最近では主にSNSで金の貸し借りの相談をし、利息や返済日などを決める。まずほとんどの場合は違法な金利を押しつけられ、なかには利息代わりに不本意な関係を強要してくるような貸主がいて、まともに金が借りられる可能性はゼロといってよい。
ここでおおよそ予想がつくと思うが、個人間融資を利用して金を借りようという人は、たいてい余裕がなく判断力が低下した状態にある。切羽詰まった人の、どうしても金を借りたいという心理につけこむのが「個人間融資詐欺」だ。
たとえば、SNSで「#個人間融資」などとタグをつけてツイートしている貸主に、金を借りたいと連絡をとったとする。すると貸主は「10万円借りたいのなら、先に保証金として1万円が必要」などのきちんと届け出している貸金業では考えられない条件を出してくる。普通ならここで疑問を抱くのだろうが、思い詰めている借主は応じてしまい、貸主が言うまま保証金を渡す。すると、貸主は保証金を受け取るだけで借主が求める金を渡さないまま、連絡がつかない状態になる。結局、借主は金を借りるはずが奪われる。詐欺に遭うのだ。
そもそもネットを使った違法な個人間融資は、これまで、ヤミ金規制などで食い扶持を失った暴力団などの反社会勢力が関与しているとみられてきた。法で定められた上限を大きく超えた金利をかけたり、借主に違法な労働を強要して強制的に金を返させるなどして、少しでも多くの金額を借主から奪おうというのが彼らのやり方だ。ところが最近、頻発している「個人間融資詐欺」の被害は、一件ずつをみると数万円程度の額の金を持ち逃げするような規模だ。このような小規模な詐欺を働くのは、従来の個人間融資の貸主では考えられない。新型の貸主たちは、いったい何者なのか。