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【大塚英志氏書評】言葉が壊れ異質の記号となる危機感

『季刊文科78 令和元年夏季号』

 年末年始はゆっくり腰を据えて本を読む絶好の機会。2020年は果たしてどんな年になるのか? まんが原作者の大塚英志氏が選んだ2020年を読み解く1冊は、『季刊文科78 令和元年夏季号』の「特集 国語教育から文学が消える」だ。

●『季刊文科78』令和元年夏季号 特集 国語教育から文学が消える 紅野謙介×伊藤氏貴 対談/鳥影社/1500円+税

 今、物議を醸している大学入試の改悪とともにもう一つ問題となっているのが、高校の国語教育から「文学」が消え「論理国語」に取って代わるかもしれぬという危惧だ。一応は「文学国語」との選択制だが、新井紀子のパフォーマンスじみた対AI教育やプログラミング教育との互換性が喧伝され、「論理国語」優位が同調圧力となってさえいる。

 その中で紅野謙介と伊藤氏貴は危機感を持って語ってきたが、それは肝心の文学の当事者に届いているのか。「文学」を守るなら「保守」だろうと、保守派の論客が編集委員に名を連ねる『季刊文科』誌上での紅野・伊藤対談を読んだ。

 対談はほぼ初対面の二人が互いのこれまでの見解を擦り合わせていく誠実なものだ。しかし対談に同席した編集委員の一人がひどい。例えば紅野・伊藤は学習指導要領が告示されてしまった以上、教科書をつくり、使う現場がそれをいかに解釈で読み替えるかしか「文学」を教育で生かす術がないと戦略を語る。

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