全日本フィギュア男子ショートプログラムで演技を終え、ステファン・ランビエル氏(右)と喜ぶ宇野昌磨(時事通信フォト)
◆ニューヒロイン・川畑和愛の振り付けも担当
ステファン・ランビエール氏は、スイス出身の34歳で、現役時代はトリノ五輪銀メダル、世界選手権2連覇という成績を残した。引退後はコーチおよび振付師として活躍し、すでに日本の島田高志郎やラトビアのデニス・ヴァシリエフスのコーチを務めていることもあって、日本のファンには広く知られた存在であったが、宇野のコーチ就任が発表されたことで、注目度はさらに高まっている。
ランビエールコーチはどのような人物なのか。フィギュアスケートに詳しいライターはこう語る。
「現役時代は高い芸術性で知られ、特にスピンの美しさは世界一と言われました。男子シングルの演技構成点で9点台を出したのはランビエールが初めてです。数々の名プログラムの中でも、フィギュアスケートの元選手ではなく、スペインの舞踏家・アントニオ・ナハーロさんが振り付けた『ポエタ』は、フラメンコとフィギュアスケートを高い次元で融合させて新しい世界を創り出した奇跡のようなプログラムで、大変人気がありました」
現役時代、ランビエール氏が指導を希望したこともあるロシアのミーシンコーチ(プルシェンコなどのコーチ)はランビエールを「アーティスト」と呼び、ランビエール氏のファンという芥川賞作家の金原ひとみさんは、<ステファン・ランビエールに寄せて>というエッセイの中で、その美しさをこう表現している。
<ランビエールが氷上に現れ一度視線を奪われた瞬間、こんなことがあって良いのかと不安になるほどの完全なる喜びが芽生え、この身を満たしていくのが分かった。彼の一挙手一投足はすべての屈託を吹き飛ばし、浮き足立つのではなく、むしろこの地に足をつけることの喜びと感動を与えてくれた>(「SPUR」2019年4月号)