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漫画家・西炯子氏、「政治に無関心な日本人は“ゆでガエル”」

主人公の山田一斗は総理大臣を目指す女性(『恋と国会』1巻より)

 国会議員の不祥事や疑惑が次々と明らかになり、国民の政治への期待や関心が薄れていくなか、「国会」と「恋愛」という異色の組み合わせを題材にしたマンガが話題をさらっている。『娚の一生』や『姉の結婚』など数々のヒット作を生みだした漫画家・西炯子(にし・けいこ)氏が『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中の、国会を舞台にした漫画『恋と国会』だ。大人の恋愛マンガの旗手として知られる西氏がなぜいま「政治」なのか? 本人がその思いを語った。

 * * *
 主人公の山田一斗(女性)は「正面突破しかできない25歳の元地下アイドル」。彼女は日本を「みんなが“まあまあ”じゃん」と思えるような国にするべく、総理大臣を目指します。若い女性に総理大臣を目指させたのは、総理大臣は女性の職業として描かれるどころか、恐らく想像すらされたことがなかったからです。誰も見たことのないその光景を、私自身が見てみたかった。だから、自分で描いちゃおうと思ったんです。しかもその話は、私がこれまで主戦場にしてきた少女マンガ誌ではなく、社会派作品が多く読者層も幅広い青年誌だからこそ、関心をもってもらえると思いました。

◆もう1人の主人公はあの2世議員をイメージ?

 一斗は真っ直ぐな性格で、鏡みたいな存在です。みんな、彼女を前にすると、自分の弱さやずるさに気づかされて、後ろめたい気持ちと向き合わざるをえなくなる。もう1人の主人公である政界の若きサラブレッド海藤福太郎(25歳)も、そうして彼女に翻弄されていきます。

 最初は、皆さんも注目されているであろう某2世議員をイメージしながら福太郎の設定を考えていたんです。でも実際描いてみると、現実にいるその方よりもだいぶ小者になりました(笑い)。

 福太郎は、生まれついた家に甘んじて2世議員を不承不承やっているような、ダメな男の子なんです。実家は2代続く総理大臣の家系で、言ってみれば彼は、「政治家」という家業を継いだ若社長ですよね。でも、せっかくの立場を活かすでもなく、“きちんとした2世議員の自分”を器用に演じているだけ。「俺の人生、どうせそんなもんだろう」って自分に対して失望しているのに、嫌だと言うこともできない。登場人物の中では一番私に近くて、描いていて本当に嫌になるんですけどね。しっかりしろやい!って…(笑い)。そんなダメなヤツが、一斗に触発されてどう成長し逆転していくのか。これは見ものです。

◆与党が舞台じゃないと意味がない

 福太郎だけでなく一斗も、与党側の人間として描いているのは、「権力の中枢に潜り込んでいかないと物事は変えられない」という思いがあったからです。現実の政界も長らく自民党政権が続いていますし、これは、どの社会にも通ずることではないでしょうか。まず懐に入れないと、権力の中心に触れることなんて到底叶わない。野党は、「反対した」という事実をつくるために反対することもありますよ。そういった形で権力と敵対する人には、結局根本を変えることは難しいと思います。だから、外野から権力の中枢に入り込んでいく人間として、一斗を設定しました。野党側からでは触れられない「力」の本質に迫りたいんです。

 もちろん、政治の世界は非常にシビアな側面が多いですから、想像では描きたくない。他作品と比較すると綿密に取材もしていて、少女マンガを描いていたときとはアプローチを変えていますね。政治家が主催するパーティーにも参加させていただきました。

 裏側に突っ込んでいくので嫌がる人もいるかと思いきや、幸いにもそんなことはなくて。政治家、政治に関する本を作っている編集者、新聞記者、政治家の元秘書など多くの方が取材に協力してくださっています。本当にびっくりする話をたくさん教えてくれます。政治の「タブー」に触れるようなことも。それだけこのマンガに期待してくれているのだと思いますし、その思いに応えていきたいです。

◆リーダーは「不出来」がうまくいく

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