韓国側が日韓首脳会談に大きな期待をかけていたことは、当日までの報道ぶりにも表われていた。12月20日には、日本が輸出管理を強化した半導体材料3種類のうち、レジストについて一部緩和したことが韓国で大々的に報じられた。同21日付の聯合ニュースTVは、翌22日に北京で開催予定の日中韓経済貿易相会合でさらなる規制緩和が進むことを期待し、日韓両国で「折衝の可能性がある」と報じていた(現実には数分の立ち話があったのみ)。さらに、韓国与党の共に民主党・洪翼杓首席報道官はレジストの輸出規制緩和を受けて、日韓関係を「元の状態に戻すべき」とまで語っていた(21日付SBSニュース)。
そして迎えた2019年のクリスマスイブは、韓国社会が日韓首脳会談に一筋の光を見出した日となった。竹島(韓国名・独島)の研究者として知られ、2003年に韓国に帰化した世宗大の保坂祐二教授は、会談当日の24日夜、YTNの報道番組で「輸出規制の完全撤廃は、もはや時間の問題」とまで語った。韓国社会には、そんな楽観論が広まっている。
だがその一方で、日本では首脳会談の成果は特になしとの雰囲気が支配的だ。「輸出管理の問題とは別」との建前があるものの、日韓関係でいま最大の障壁となっているのは「徴用工判決」に他ならない。日本政府は元徴用工らへの補償は「解決済み」とする立場を変えておらず、今後もその原則が揺らぐことはないだろう。
2020年、韓国が日本の輸出管理体制の緩和という希望を実現するためには、自らの最高裁が下した徴用工裁判の結果を反故にするという高いハードルを越えなければならない。日韓関係の改善を望む韓国社会には、厳しい現実が待ち受けている。