芸能

木村拓哉は『教場』で「ヒーロー・キムタク」を葬れたかも

番組公式HPより

 木村拓哉は日本においてその作品動向が最も注目される俳優のひとりであると同時に、常に失敗が許されない立場を求められる。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 年末、電車の中でもテレビ画面でも、妙に頬がこけ白髪で濃いサングラス姿の中年男性の不気味な顔が目に飛び込んできた。これがキムタク? 警察学校の鬼教官をキムタクが演じるという衝撃的なSPドラマ『教場』(フジテレビ系)の番宣でした。

 年末年始といえばまさに「キムタク祭り」の様相で、天才シェフ・尾花夏樹役が話題となったドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)は29日の最終回の視聴率が16.4%。まずは成功と言える着地ぶりで、続編を期待する声も聞かれました。

 続けて、年が開けると3日に映画『マスカレード・ホテル』の地上波放送。フジテレビとしてはその勢いを保ったまま、視聴者に『教場』へとなだれこんで来てほしい、という願望ありあり。そんな「キムタク祭り」の作戦にのって騒ぐのには多少抵抗感があった人もいたはずです。

 という状況下、1月4日、5日2夜連続で放送されたスペシャルドラマ『教場』。木村さんは適正の無い人間を容赦なくふるい落とす鬼教官・風間公親として、異形の風貌で登場してきました。

 案の定、登場してしばらくの間は、何とも居心地の悪い浮遊感が漂っていた。「鬼」と呼ぶにはドス黒い迫力が欠けている印象か。セリフにキムタク節の抑揚やクセもちらり感じられたりして、鬼教官よりも「木村拓哉」が前面に出てくるのかどうか、視聴者としてはとまどいつつ見ていました。

 しかし。物語が展開していくにつれて、「鬼教官」としてのキャラクターがしっかりと立ち上がってきたのです。

 静かで落ち着きのある怖さ、何を考えているのかわからない不気味さ、メガネの奥にのぞく瞳の不自然さ、ピクリとも動かない顔の筋肉。鬼教官・風間の暗さと凄まじい集中力とが、見ている人をぐいぐいと惹き付けて最後まで離しませんでした。

 もうこの人を、「キムタク」とか軽々しく呼んではいけないのかもしれない。「何をやってもキムタク」という言葉を封印すべき時がきたのかと感じさせるほど、役者としての決意が伝わってきたのです。

 世の中、ファンと同じくらい突っ込みを入れようと待ち受けている辛口視聴者がたくさんいます。そうした人々を前にして、演技で説得しねじ伏せるのは、並大抵のことではない。その意味で正統派役者・木村拓哉の誕生の夜、だったのではないでしょうか。

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン