休憩中、笑顔も見せていたキャロル夫人

休憩中、笑顔も見せていたキャロル夫人

 イギリスの記者が「火のないところに煙はたたない」と、皮肉混じりのトーンで日本を逃れたことについて聞かれたところ、声を大きくして弁明する場面もあった。

 もしかしたらゴーン氏は、ここに集まる全員が味方になってくれると思っていたのだろうか。そのために報道陣を選んだのだろうか。質問するメディア側があまり彼の話に乗ってこない場面では、ゴーン氏のジェスチャーは大きくなっていった。そして日本の司法批判を繰り返し、要所要所でキャロル夫人への愛情を口にしていた。

「愛するキャロルに会いたかったんだ……」

 最前列に座っていたキャロル夫人の横に移動していた私は、夫の愛情の言葉を聞くたびに、両手の指を絡める反応をしたり、微笑む表情を作ったりしている様子を見ることができた。

 質疑応答が進むにつれてヒートアップし、世界中から集った記者たちの側も、もう当てられる順番はどうでも良くなっていた。当てられていないのに立って質問を始める者もいれば、何人も同時に話し出す者もいた。ゴーン氏は「待ちなさい、待ちなさい」と困惑していたが、瞳の奥には笑顔も見えていた。

 私も順番が来る前にマイクを渡されたので、わざと立ち上がって質問した。ゴーン氏が私を見ていたことがわかっていたからだ。

「この会見の場に日本のメディアがそれほど多く集っていないことに驚いている。なぜ一部のメディアしか招かなかったのか。それと、独房での生活について少し詳しく教えていただきたい」

 私がそう尋ねたとき、ゴーン氏の表情は険しかった。興味深いのは、我々日本のメディアに対しては、ほとんど笑顔を見せなかったことだ。眉間にしわを寄せ、終始、厳しい表情で訴えていた。私の質問には、「私は日本のメディアを差別しているわけではない。また、日本のメディアだけ締め出したわけでもない」「正直に言って、プロパガンダを持って発言する人たちは私にとってプラスにはならない。また、事実を分析して報じられない人たちは私にとってはプラスにならない」と答えた。そして結局、言いたいことはただ一つだった。「私は無実。何もしていない」ということ。

 ゴーン氏の会見は、社長時代に日産をV字回復させた時のプレゼンを見ているようだった。自信あふれる彼の姿を見ながら、今後の日本との戦いに恐れなど感じていないだろうと思った。それはキャロル夫人も同じだった。彼ら2人は、このままどこに辿り着くのかは分からない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン