こうしてみると家康も、秀家も、やりすぎず、いい具合の食べ方を知っていたように思う。

 菜食か、肉食かという以前に、現代の日本人は、野菜も、タンパク質も足りていない。厚生労働省は一日350グラムの野菜を摂ることを推奨している。長野県は野菜摂取量日本一だが、多くの地域ではあと100グラム不足している。いつもの定食に、ほうれん草のおひたしを一品加えよう。野菜ジュースでもいい。

 タンパク質は一日60グラム必要といわれる。がんばって貯筋をしようと思ったら、体重の2倍のグラム数を摂らなければならない。たとえば、体重50グラムの人は100グラムのタンパク質が必要ということだ。これが意外に大変だ。200グラムのステーキを食べてもタンパク質は50グラムくらいしか摂れない。ほかにも、納豆や牛乳、卵などを、3食に分けてこまめに補給する必要がある。タンパク質が強化されたプロテインミルクやプロテインヨーグルトなどを利用するのもいいと思う。

 宇喜多秀家の逸話でいいなあと思ったことがある。八丈島の代官に飯をごちそうしてもらったとき、自分は少し食べて、残りはおにぎりにして家族に持って帰ったという。思いやりがある。そのうえ島流しの身でありながら、よく笑った。こういう人と一緒に食事をしたら、楽しいに違いない。

 新しい年が始まった。家康も秀家も経験しなかった人生100年時代に向け、今年一年の千回余り、どんなものを、だれと食べるのか。楽しい一計を立ててみたい。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2020年1月17・24日号

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