大変なことになったと思った。父が亡くなった後の母の激変ぶりを思い出したからだ。激しいもの盗られ妄想と暴言。もともと温和な母がああなったのだからSおばさんは…と想像すると怖くなった。
主治医のすすめもあり、Sおばさんはグループホームに入所することになった。
グループホームは認知症の人だけが少人数で暮らす施設だ。認知症の人が安心できる環境なのだろうが、母同様、家族一筋で生きてきたSおばさんはなじめるのか。いやおばさんが受け入れられるのか。
「“どーしたらいいのー!!”とか叫んで、大変なことになるのも覚悟したんだけど…」と、Aちゃん。
ところが意外な展開だった。
「びっくりよ! お母さんたら、お茶を入れたり入所者のかたの移動を手伝ったり、職員の人から頼りにされるくらいよく働いているの。寂しがるどころかイキイキしてる」
さすがSおばさん。“愛に生きる女”と母が呼んだだけのことはある。思い切って新環境に挑んだSおばさんに、幸あれ!と祈った。
※女性セブン2020年1月30日号