長野県上田市に「日本一おいしい病院レストラン」と呼ばれる名店がある。人間ドック受診者向けの特別メニューのランチも人気で、人間ドックの予約はなんと1年半待ちだという。
そんな名店は、丸子中央病院の最上階9階にあるレストラン『ヴァイスホルン』だ。「地域に開かれた病院」を目指す、この丸子中央病院では、その一環として病院レストランを開放、一般客も利用できる。
営業は平日のみで、日替わりランチ(平日11時~、14時ラストオーダー)と、カフェ・4~5種類の中から選べるデザートセット(平日14時~、16時ラストオーダー)が提供されている。
『ヴァイスホルン』のシェフは、山田康司さん。長野県松本市出身の54才。かつてはフランス料理の有名店『クイーン・アリス』の料理長を務めていた。そして実は、東大を中退して料理人になったという異色の経歴を持つ。
◆手探りだった病院食の仕事で本当の“減塩”にたどり着く
丸子中央病院の理事長は、山田さんの義弟が務めている。
「妹の旦那さんなんです。私が『クイーン・アリス』で働いている時から、“患者のために病院の食事をよくしていきたい。時間のある時にアドバイスをしてほしい”と言われていました。でも、東京で働いているとなかなかそうもいかず、先延ばしにしてしまっていました」
ところが、2011年、タイミングがぴたりと重なる。
「『クイーン・アリス』の仕事もひと段落し、次を考えていた時に、理事長から正式に声をかけていただいて。当時は院内にレストランがなかったので、食事の委託業者のかたとメニューの見直しをするなど、食事指導から始めました。その後、病院の移転計画の際に病院内にレストランを作ってみようということになり、現在に至っています」
世界保健機関(WHO)は1日の食塩摂取目標を5gとしており、日本でも病院食は1日6g未満を徹底するように指導している。山田さんも最初の頃は、栄養士に塩分をチェックしてもらい、そのメモを貼り出していたという。