「丸子中央病院のスペシャルカレー」は、先に具材をオーブンで加熱することで旨みを凝縮(写真は山田さんの著書『日本一おいしい病院レストランの野菜たっぷり長生きレシピ』より。撮影/泉健太)

「最初こそ、塩分を減らすために試行錯誤していましたが、ある時に気づいたんです。素材の味を引き出すことを心がけて料理を作れば、1日の量を超えるような塩分の使い方にはならない、と。減塩に頭を悩ますのではなく、素材を生かしたおいしい料理を作ろう。そう考えるようになりました」

 素材本来の味を引き出す調理。これは山田さんが、「クイーン・アリス」の石鍋裕さんやフランスの三ツ星シェフ・ミッシェル・ゲラールさんから学んできたことであり、山田さんの料理人としての軸だった。

「○○を食べると○○病になる、あるいは予防になるからと、好きな食べ物をがまんしたり、毎日同じものばかり食べ続けるのは楽しくない。だったら、おいしいものをおいしく食べる方が、よほど体にも心にもいい」

 どうやったらおいしくなるか。山田さんが考えるのは、高級食材を特別な作り方で提供する、ということではない。

「ここでは、高価な食材は使っていません。あくまでも、地域の旬の食材や、近所のスーパーなどで手に入るものだけ。調味料も特別なものは使わず、一般の家庭でも当たり前に使うようなものばかりです。それでも充分においしくなります。たとえばトマト。おいしい時期とそうでない時がありますよね。料理する際は、どんなトマトもおいしい時のトマトに近づけるようにします。時には塩や砂糖を加えたりします」

 トマトをマリネする時に、あらかじめ切ったトマトにほんの少しの塩を振っておくと、真夏のトマトのように甘くなるのだそう。そうすれば、その後はほとんど塩を使わなくてもいい。

 さっと火を通したり、素材の持つ水分を引き出しながらじっくりと炒めたり、“火入れ”に重きを置くフレンチの技法の数々が生かされているといえる。

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