この言葉の後に、芦川は「主人」と「毎晩寝る前に」行なっている儀式について告白している。それが何かは本書で確かめていただきたいが、真似ができそうで、なかなかできない行為である。
読んで、見て、眺めて、いつまでも厭きない本だ。巻末の出演作品一覧を見ていて、引退の前年に出演したフジテレビのドラマが目を惹いた。その名は「東京物語」。小津安二郎監督の名作のテレビ化である。共演者には東山千栄子、大坂志郎といったオリジナル作品の出演者もいる。芦川いづみは、原節子が演じたあの「紀子」役だったのではないか。是非とも見てみたいドラマである。
※週刊ポスト2020年1月31日号