【著者に訊け】川越宗一さん/『熱源』/文藝春秋/1850円
【本の内容】
若くしてサハリンに流刑されたポーランド人のブロニスワフと、サハリン生まれのアイヌのヤヨマネクフ(山辺安之助)。帝国主義のもと、列強の激しい覇権争いの中で、それぞれロシア、日本の文化に飲み込まれそうになりながらも自分を見失わない波乱万丈の人生を中心に、明治初期から第二次世界大戦終了までのドラマを描く。アイヌの人々の伝統的な暮らしが生き生きと描かれているのも魅力。
1月15日になんと2作目となる本作で直木賞受賞が決まった川越宗一さん。前日に京都から上京し、この取材は選考会が始まる2時間前という落ち着かない中でのものだったが、終始柔和な表情で、質問に答えてくれた。
『熱源』は北海道、サハリン(樺太)、ロシア、南極にまたがる壮大な物語だ。日本とロシアの同化政策に苦しみ、戦争に運命を変えられながらも、たくましく生きるアイヌとポーランド人の姿を描く。
執筆のきっかけは5年前、夫婦で訪れた北海道で白老(しらおい)のアイヌ民族博物館に立ち寄ったことだった。
「ブロニスワフというポーランド人の銅像を見て、なぜ北海道にあるのか、アイヌとどんな関係だったのかなと思いました」
調べてみるとポーランド独立の英雄の兄であり、サハリンに流刑されてアイヌと交流し、結婚もしていたことがわかった。アイヌの中には南極探検隊に参加した山辺安之助がいた。2人を中心に川越さんの中で物語が動き始めた。