「ヒートショックが起こりやすいのは5℃以上の温度差。暖房した部屋は23℃前後なので脱衣所は18℃以上に。最近は脱衣所用の手軽な暖房器具も多数出ているのでぜひ設置を。浴室は浴槽の蓋を開けておいたり、入浴前に3分ほど熱い湯を床や壁に当てておいたりするとよいでしょう。また湯船に入る前には必ずかけ湯を。体が湯温に慣れるように、手先足先から順に最低10杯はかけましょう」
そして厳守したいのが湯の温度と浸る時間だ。
「高齢者なら40℃で10分間。42℃になると交感神経が優位になりリラックスできないだけでなく、ヒートショックのリスクが急増。10分以上では熱中症の危険があります。高齢になると皮膚感覚が鈍くなり熱めの湯が好まれますが、本人の気持ちよさとは関係なく、温度によるリスクは高まります。温度計、湯温計でしっかりチェックを。また脱水予防の水分補給には麦茶。入浴前と後に忘れずに」
入浴前の血圧も確認しよう。こちらも2000人規模の疫学調査により、リスクが上がる数値が判明している。
「入浴前の血圧160/100までを目安に。発熱や意識喪失、呼吸困難などのリスクが、最高血圧160以上では3倍、最低血圧100以上で10倍にもなります」
皮膚の乾燥も気をつけたい。
「皮膚の乾燥によるかゆみは大きなストレス。湯船に浸るだけでもある程度の汚れは落ちますから、髪や顔など体の中心部以外は石けんも使わなくていいくらい。保湿系の入浴剤もおすすめです」
湯船に浸る健康効果は、世界屈指の長寿の一助も担っていると早坂さんは言う。
「年を重ねるうちに浴槽をまたぐことが難しくなるかもしれません。でもそうなったら福祉用具の手すりを設置したり、デイケアの入浴サービス、訪問入浴なども利用できます。リスクをしっかり理解しながら、できるだけ長く入浴を楽しんでほしいですね」
【Profile】
早坂信哉さん●東京都市大学人間科学部教授/医学博士・温泉療法専門医
高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき3万人を調査した入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。テレビやラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書に『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)など。
※女性セブン2020年2月13日号