あまりにも自分を低くしすぎて真冬、みんなで釧路の平原に建つ一軒家でストーブの近くに集って暖を取っているうち、服を脱がされて朝まで外に放置され、全身がカチカチになって死ぬ。あるいは道を歩いていて、自分なんか端でいいと思い、どぶ川のなかを四つん這いになり、言葉も忘れて、名前もわからなくなる必要はない。といった町田流ギャグもふんだんに出てくる。
他人と自分を比べることによって自分の価値を計ることの無意味を知る。禁酒をすると八キロほど体重が減少し、「肥った醜いおっさん」として迫害・差別されることがなくなった。かつてパンクロッカーであった時代に着ていた服を着て、「俺はアナーキストだ」と叫ぶこともできる。脳髄も「ええ感じ」になり、睡眠の質が向上し、経済的な利得という効果が得られた。ようするに、酒を飲んでも飲まなくても人生は寂しい、という告白的格闘記。
※週刊ポスト2020年2月14日号