──1994年にはビールの増税を盛り込んだ酒税法改正が行なわれ、発泡酒が登場しました。2020年は10月にビールが減税、第3のビールが増税になる酒税法改正が控えています。その後、段階的に改正が実施され2026年にはビール、発泡酒、第3のビールの酒税が一本化される見込みです。1994年とは逆の形の改正による影響をどう考えていますか。
尾賀:酒税が据え置かれる缶チューハイなどのRTD(レディ・トゥ・ドリンク)に第3のビールの愛飲者が流れる部分はあると思います。当社は第3のビールの新商品「サッポロ GOLD STAR」を2月に発売し、「麦とホップ」とのツートップ戦略でお客様のニーズに応えていこうと考えています。
ただ、ビールは今後6年間で約22.75円下がる計算になります(350ml缶)。結構な金額ですから、ビール販売は巻き返しのタイミングになります。サッポロにとってはやっぱりビールが一番の存在意義です。缶の「黒ラベル」は5年連続で前年の販売数量を上回っていますし、「サッポロラガー」や「サッポロクラシック」も、それぞれ8年連続、19年連続で前年の売り上げを超えています。消費者の方々もビールそのものに関心を失っているわけではない。むしろ“選び抜いた1杯をゆっくり楽しみたい”という嗜好が強まっているんです。
品質にこだわり、ビールへの関心を呼び覚ますような商品を作り続けることはもちろん重要ですが、1杯のビールを、より美味しく楽しむための飲み方やストーリーをトータルで提案していかなければいけないと考えています。
【プロフィール】おが・まさき/1958年東京都生まれ。1982年慶應義塾大学法学部卒業後、サッポロビール入社。2009年執行役員、2010年取締役兼常務執行役員、2013年代表取締役社長を経て、2017年3月より現職。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号