この無反省コメント、公に向けての限定だ。騎手と調教師とに信頼関係があれば、「追い出しが早かったかも」「内に切れこめば良かった」などと的確に省みるという。そりゃそうです。サシで「分からない」なんて言われたら困っちゃうよ。
騎手の本音はメディアには顕れないわけだが、馬券検討としてはどんなもんだろう。
私が注目したいのは「凡走が続いたとき、騎手が乗り替わるかどうか」。乗り替わりならば、その騎手は陣営から見限られた……と見る。手綱次第でもっと走るはずなのに、といった塩梅なのではなかろうか。
では逆は? 負けてばかりなのに騎手が乗り続けるとすれば、陣営は乗り役に期待をかけているのでは? 膝づめで敗因を話し合ったかもしれぬ(馬も交えて車座だと面白いけど)。
「前回と同じミスを繰り返したら替える。そこはプロとして厳しくいく」
そう教えてくれた調教師もいる。理由は類推するしかない。配当的にも、前走デキの悪かった馬の飛躍を期待したいのである。
●すどう・やすたか/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号