その上で第21週のタイトルバックを見て、「あれ?」と思った人は少なくないでしょう。脚本家がこれまでの水橋文美江さんから三谷昌登さんに代わっていたのです。ちなみに三谷さんは、「フカ先生」の二番弟子・磯貝忠彦を演じた俳優でもあり、過去には『あさが来た』のスピンオフ『割れ鍋にとじ蓋』の脚本も手掛けました。最も忙しいであろう水橋文美江さんと戸田恵梨香さんを1週間分、休ませることができたのです。
本編放送中のスピンオフにおけるもう1つのポイントは“章立て”。民放の連ドラは「第1章、第2章、第3章、最終章と小刻みに章立てすることでクライマックスを増やし、視聴者を飽きさせることなく引きつける」という構成がすっかり定着しました。その点、『スカーレット』は明確に章立てしたわけではないものの、「章の合い間にスピンオフをはさむ」イメージだったのではないでしょうか。
たとえば、喜美子が陶芸家として歩きはじめた年末の第13週までが第1章。年末年始のインターバルをはさんで年明けの第14週から陶芸家として成功しながらも離婚してしまった夫との和解までを描いた第20週までが第2章。スピンオフの第21週をはさんで、第22週からの残り4週で最終章を描こうとしているのかもしれません。しかも、その第22週以降は、喜美子の息子・武志(伊藤健太郎)の闘病を描く重苦しい展開が予想されているだけに、その前に明るいムードのスピンオフを入れたのでしょう。
◆「本編放送中のスピンオフ」は定着するのか
もし今回のトライアルが最終的に視聴者から評価されたら、本編放送中のスピンオフは今後も制作されるでしょう。また、定着するにつれて制作サイドは脇役たちの登場シーンにより注力するでしょうし、キャラクター造形のうまい脚本家が重宝されそうです。
ただ、「定着するか」と言えば、その「可能性は高い」とは言えません。毎日放送される朝ドラは「生活リズムの1つになっている」という人も多いだけに、「いきなり本編に関係のない話が入ってくる」という構成は受け入れられにくく、実際に「調子が狂う」という声も見られました。
そもそもスピンオフは、本編を最後まで見てくれた人へのファンサービス。やはり順番としては本編終了後の放送が妥当であり、終了前に放送するとしても「本編とは別の枠で見てもらおう」という配慮があったほうが視聴者を喜ばせるのではないでしょうか。