無類のコーヒー好き。焙煎の仕方など会話も専門的
中2になると安定して1位を取るようになり、平均偏差値は65に上昇。ただ、1位を取り続けることで、露骨に無視されたり心ない言葉をかけられたりという、いじめが始まった。
「勉強を頑張れば頑張るほど居心地が悪くなるという状況は、本当にきつかったですね。周りにビクビクすることも、頑張る自分を否定することも、すべてに疲れていました。ただ、別の高校に行くとなると、これまでの授業料を返さないとならない。たどり着いた答えは、彼らと同じ土俵に立つ必要はないということ。周りを黙らせるくらいのダントツの1番になろうと決意したのです」
それが東大受験を本気で目指す原動力となった。高1の模試では東大B判定をマーク、すでに射程圏内に入っていた。ただ、非進学校からの東大受験には大きなハンデがある。これまでも論じられてきた、情報の少なさだ。大野さんの地元には、京都大学や大阪大学を目指す予備校はあっても、東大対策をしているところがなかったため、鉄緑会や東進ハイスクール、Z会、河合塾など、東大受験にいいといわれる予備校の講義を片っ端から試していった。
「生の情報を手に入れるまでが一苦労というのはもちろんですが、“ライバル不在”という点も大変でしたね。ぼくのような非進学校出身の東大生に話を聞くと、周りとは成績が違いすぎて、自分の立ち位置がわからなかったという意見が多く出ます。自分はインターネットの学習管理アプリ『スタディプラス』で東大志望生とつながっていましたが、実世界でライバルや励まし合う友人がいないというのは、やる気を維持するうえで厳しいと思います」
実際、高2の進研模試では国・英・歴で校内偏差値114.1という、とんでもない数値をマークしたが、そのときの東大文三はC判定だった。
そんな中、やる気を維持するのに役立ったのは、学外の東大志望の高校生と会うこと。その一方で、学校での勉強に限界を感じてもいた。
「周りは受験モードになっていないので、『勉強したいから静かにしてほしい』と言ったところで難しい。先生や親に相談して、11月からは学校を休んで自宅学習を基本として、講義のある日は予備校の自習室で勉強をすることにしました」
そうして迎えた1月のセンター試験では、9割を超える847点を記録。センター利用で早稲田大学国際教養学部に合格したが、気を緩めることなく東大二次試験へ。2日目の英語が終わって、シャーペンを置いた瞬間、「合格できた」と確信したという。足掛け5年、さまざまな逆境を乗り越え、東大合格を勝ち取った最大の理由はなんだったのか。