五輪開催を見越して高騰続ける東京のマンションバブルは一気に崩壊か
その場合、最も分かりやすく不動産の価格が下落するのは、いわゆる「五輪エリア」だと想定できる。それは競技会場や選手村などの五輪施設が、集中的に建設された東京の湾岸エリアのことである。
東京五輪の開催が決定したのは、2013年9月。東京の湾岸エリアはその直後からブーム、あるいはバブルと呼んでもよいマンション価格の高騰が見られた。
例えば、五輪開催決定時に地下鉄の駅から徒歩12分という場所で分譲されていたタワーマンションの売り出し価格は、平均坪単価260万円前後であった。これはそれまででは考えられない高値で、売り出し当初は相当に苦戦していた。ところが、五輪開催が決定した途端に購入希望者が殺到。短期間で完売してしまった。
そのマンションの中古価格は今、坪単価300万円前後まで値上がりしている。ちなみに、東日本大震災後の、あの周辺の中古タワマンは坪単価100万円台の中後半が相場観であった。
その頃と今と比べて、日本の経済力は特段強くなっていない。ましてや個人所得が伸びたわけでもない。消費増税や社会保険、公共料金の値上がりなどで、むしろ可処分所得は減っているはずだ。
であるにもかかわらず、湾岸エリアのタワマン価格だけが異様に値上がりしたのである。その理由は異次元金融緩和という背景もあるが、何よりも「五輪が開催される」という華やかさを伴った人々の“高揚感”なのである。
だから、駅から12分も歩くそのタワマンの中古価格が坪単価にして300万円という、異様な高値に張り付いたままなのだ。本来の資産価値は、五輪開催が決まる前の坪単価100万円台中後半あたりではないかと私は考えている。