山口さんの母の在宅医だった山中さん(撮影/横田紋子)

山口:大学病院ではいろんな先生に診ていただきましたが、どの先生も患者ではなく、コンピューターしか見ていなかった気がします。必ず母の顔を見て直接血圧を測ったり、手や脚を触ったりしてくれたのはおひとりだけでした。

山中:いくら技術がある有名な医者でも、患者さんの話を聞かなければ病状はわかるわけがありません。大きな病院のメリットは高度な検査ができることですが、実際には血液検査や尿検査はデータとして取るだけで治療につなげていないことも多いですし、ムダが多いと感じます。

山口:あの頃、母は自力で歩けましたし、緊急を要するような病状ではありませんでした。いまから思えば、定期的に薬をもらうだけなら、あえて大学病院に行く必要なんてなかったんですよね。主治医が近所の医院に移ったのをきっかけに、大学病院に行くのをやめました。

〈2018年9月、絢子さんは直腸潰瘍からの出血により大学病院に救急搬送。以後寝たきりになった。このとき、回復が見込めずに療養型病院への転院をすすめられた山口さんは「もう助からないなら、私が家で面倒を見る!」と、兄たちの心配を押し切って在宅での看取りを決意。「病院でできることは在宅でもできるので大丈夫」と言う山中さんの言葉もあり、10月末に自宅に連れて帰った〉

山口:それまでの母はゆるやかに下降線をたどっていたので、このまま少しずつ弱りながら、100才くらいまで生きるのかなと能天気に考えていたんです。母が嫌がる訪問リハビリをもう少し無理に続けていれば結果が違ったのかな、と後悔することもあります。

山中:うーん。でもお母さまは無理な治療や投薬をせず、最期の時間を大切な家族と一緒に、穏やかに過ごされたのではないかな。最期まで、ご家族の愛情に包まれていらっしゃったと感じます。

◆医療の選択は結果論 家族は悩んで当たり前

関連キーワード

関連記事

トピックス

高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年、第27回参議委員議員選挙で使用した日本維新の会のポスター(時事通信フォト)
《本当に許せません》維新議員の”国保逃れ”疑惑で「日本維新の会」に広がる怒りの声「身を切る改革って自分たちの身じゃなかったってこと」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《広陵高校暴力問題》いまだ校長、前監督からの謝罪はなく被害生徒の父は「同じような事件の再発」を危惧 第三者委の調査はこれからで学校側は「個別の質問には対応しない」と回答
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン