国内

新型コロナで浮き彫り「縦割り行政」の害悪と蠢く利権

韓国のドライブスルー方式の検査は数分で終わる(写真/アフロ)

 深刻化する新型コロナウイルス。日本政府による水際対策は十分とは言えず、感染拡大を抑えることはできていない。まさに、日本の政治家の危機管理能力の低さが露呈しているのだ。

 しかし、今回の危機で明らかになったのは、政治家の危機管理能力の低さだけでない。日本の行政システムが、相も変わらぬ強固で融通の利かない「縦割り主義」であることも露呈した。しかもそのことが国民の生命さえ脅かしている。

 その象徴が、新型コロナウイルスの検査体制だ。いま日本では国民に発熱などの症状が出て、「ひょっとしてウイルスに感染したのではないか」と不安になっても、感染の有無を診断する検査が受けられるとは限らない。

 感染の有無を調べるのは、のどの粘液などを採取し、試薬を加えるなどしてウイルス特有の遺伝子配置を検出する「PCR検査」だ。これまで日本の臨床現場では、医師が「PCR検査が必要」と判断したら保健所に連絡し、さらに保健所が地方衛生研究所(衛生研)など実際に検査をする機関に依頼してきた。

 だが、検査数は一向に増えなかった。2月18日に政府は「1日約3800件の検査が可能」と説明したが、実際には2月下旬の段階で1日平均わずか900件しか実施していなかったことが国会での追及で明らかになった。

 その背景には、衛生研および、その上部組織である国立感染症研究所(感染研)を外郭団体とする厚労省の「縄張り意識」である。

「早急に民間の病院やクリニック、検査会社でも検査が実施できるようにすればよかっただけのことです。日本中でその気になれば、現在の100倍の検査能力があっても不思議ではない。

 しかし、厚労省は民間のクリニックや検査機関を、事実上、締め出しました。感染研は感染症の拡大防止ではなく、感染症の調査や研究を行う組織です。彼らにとって、PCR検査で得られるデータは非常に重要で民間には渡したくないので、衛生研に一元的に検査を請け負わせる仕組みを構築しました。しかし衛生研主体で検査するには圧倒的に人数が足りず、検査できる件数に限りがありました」(全国紙社会部記者)

 実際、元感染研研究員で白鴎大学教授の岡田晴恵さんは、ある政治家から「感染研が検査データを自分で持ちたがるから、検査が普及しない」という趣旨の説明を受けたことをテレビ番組で暴露した。縦割り行政の弊害を受けているのはほかならぬ国民だ。

「ウイルス感染の症状が出た国民や患者を診断した医師がPCR検査を望んでも、人手不足などを理由に保健所から拒否されたり、たらい回しにされたりするケースが全国で続出しました。原因は感染研が検査をほぼ独占しているからであり、そのシステムを改めて検査数を増やすことをしなかった政府の怠慢は否定できません」(前出・全国紙社会部記者)

◆検査数は増えるか?

 事実、日本医師会は3月4日、医師によって検査が必要な患者だと判断されたのに、保健所に検査拒否をされたケースが7道県の医師会で30件報告されたと発表した。全国だともっと多いはずだ。

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン