ナビタスクリニック理事長の久住英二さんも国民の不利益を指摘する。
「感染研が検査を独占すると予算が増額されるなど、彼らにとってのメリットが大きいことは事実です。そのために検査現場が疲弊し、患者が必要な検査を受けられない弊害はもっと大きい」
3月6日から検査に公的保険が適用された。
「しかし、院内感染を防止する観点などから当面の間、検査を実施できるのは全国におよそ860か所ある『帰国者・接触者外来』などに限られます。それ以外の医療機関で感染が疑われる患者が出た場合は、原則としてこれまでと同じように保健所に設置された『帰国者・接触者相談センター』に連絡することになっており、検査数の大幅な増加は期待できません」(前出・全国紙社会部記者)
久住さんも「政府は国民の不安を早急に取り除くべきです」と指摘する。
「パニックを避けるには、検査体制を拡充して疑わしい人がすべて検査を受けられるようにする必要があります。新型肺炎は実際には8割が軽症ですむデータがある感染症なので、実際に検査をして“コロナはそこまで怖くない”と一般市民が納得することが重要です」
縦割り行政の弊害は、こんなところにも現れた。
「安倍首相は2月26日に突然、多数の人が集まるスポーツ・文化イベントの自粛を求めた。それに仰天した人は多かったが、最もショックを受けたのは文科省関係者だったでしょう。まさにその日は、国立・公立大学入試の前期試験2日目だった。多くの受験生が長時間にわたって、機密性の高い部屋に籠もる入試は、最も感染を警戒すべき環境といえます。しかし、コロナ対応は厚労省が仕切っていて、文科省には情報が伝わっていなかった。だから、大半の試験会場ではマスク着用を徹底させるわけでもなく、手指のアルコール消毒の準備もしていなかった。
そんなに深刻な事態なら、なぜ文科省を通じて入試の現場に、感染予防の徹底を呼びかけなかったのか。それも、厚労省と文科省の間に“壁”があったからできなかったのです」(文科省関係者)
※女性セブン2020年3月26日・4月2日号