学生運動以外にも、元陸軍軍人のアナーキスト・奥崎謙三による昭和天皇パチンコ狙撃事件や、赤軍派53人が一斉に逮捕された大菩薩峠事件など、各地で騒乱があった。

「つきつめれば、僕らは戦後という時代の“くだらなさ”に気付いてしまったのです。戦争から帰ってきた親世代には、『戦後は良い時代である』という共通認識があり、ひたすら経済繁栄を目指しました。しかし、その後ろにあったのは冷戦構造であり、アメリカによるがんじがらめの支配です。小さな日本がジタバタしたところで、先が見えている。親世代や知識人たちがその点に目を向けず、安穏としているなか、目を背けずに、『戦後などろくなものではない』と声を上げたのが、学生たちだったのです」(橋爪氏)

 三島もまた戦後日本に失望していた。大正生まれの三島は、東京帝国大学(現東大)の学生時に召集され学徒出陣する予定だったが、入隊検査で肺浸潤が見つかって出陣を免れ、20歳で敗戦を迎えた。その後、大蔵省勤務を経て作家活動に専念した。ジャーナリストの田原総一朗氏(85)が指摘する。

「僕も三島と同じで戦争を知っている世代ですが、終戦時の玉音放送を機に日本はそれまでの鬼畜米英から180度変わって親米国家になり、経済的繁栄を手に入れた。敗戦後、二度と戦争をしない代わりに対米従属の道を突き進んで金儲けに全力を傾ける日本に、三島は心底苛立っていた。彼は主体性のない日本に我慢ならなかったんです」

 近代化で失われつつある「日本の伝統美」を追求し続けた三島は、1960年代に入ると天皇主義に傾倒し、祖国防衛を掲げた民兵組織『楯の会』を結成。自衛隊に体験入隊を繰り返した。

「立ち位置は真逆でも、三島にはどこかシンパシーがあったはず。それゆえ全共闘を評価する言葉が出たのだと思います」(田原氏)

◆日本社会がぽっきり折れた

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