国内

コロナ関係のカタカナ専門用語は「ジンクピリチオン効果」か

「オーバーシュート」ってなに?(EPA=時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、新型コロナ関係の発表で多用されるカタカナ専門用語の秘密を解説。

 * * *
「なんでカタカナ?」

 河野太郎防衛相が自身のツイッターでそう疑問を投げかけたくなったのもわかる。新型コロナウイルスの感染拡大について、聞き慣れない専門用語が次々と飛び出してきたからだ。そ

 3月20日、安倍首相は第21回の新型コロナ感染症対策本部で、“オーバーシュート”なる専門用語を用いた。それを受けてニュースも情報番組も一斉に、首相がオーバーシュートが生じる可能性に言及したと報じたのだが…。

“オーバーシュート”っていったい何? 聞いた瞬間、国内のコロナの感染拡大のフェーズが、がらりと変わったのかという不気味な感覚に襲われた。“クラスター”という横文字を初めて聞いた時と同じだ。今では日本中、誰もが知っているこのクラスターという言葉は、“患者集団”や“感染者集団”のこと。英語で“群れ”や“集団”という意味のため、あるまとまり的なイメージがあるが専門用語としてどういう意味で使われているのか、一般人には正直よくわからない。そして、よくわからないだけにどことなく怖そうな印象を覚えたものだ。

 この印象は“オーバーシュート”も同じ。英語では“行き過ぎる”や“度を超す”を意味する言葉だけに、何か大事が起きそうなのかと思わせる。確認のため首相官邸のHPを見てみると、専門家会議による今後の見通しとして「全国のどこかの地域で患者の急激な増加、いわゆるオーバーシュート~」とあった。漢字にすれば“爆発的患者急増”、“感染爆発”のこと。このところ見聞きし慣れてしまった文字が並ぶだけに、なんでわざわざカタカナに?と、河野大臣と同じ疑問が湧いた。

 だが、耳にした時の印象操作が重要だったのかもしれない。最初に感じた怖そうな印象というのは、おそらく「ジンクピリチオン効果」によるものだ。“ジンクピリチオン”とは、花王のロングセラーシャンプー「メリット」に配合されている成分だ。花王はメリットのCMで、この難しい名前の世間にはよくわからない成分を配合とうたうことで、“なんとなく効きそう”、“よさそう”という印象を与えることに成功。ここから、よくわからない専門用語があるだけで評価や説得力が上がることを「ジンクピリチオン効果」という。

 休校要請やらイベントの自粛やら強制措置を取らず、まだまだ国民に自粛を促したい安倍政権としては、よくわからない専門用語を用いることで、今はまだ安心して気を緩めるには時期尚早!と思わせたいのではないだろうか。

 次に出てきた専門用語は“ロックダウン”。横文字好きの小池都知事が23日の記者会見で、「ロックダウンなどの強力な措置を取らざるを得ない可能性もある」と述べたのだ。“ロックダウン”は“都市封鎖”や“首都封鎖”のこと。漢字でいいと思うのだが、河野大臣のツイッターにはフォロワーから、「ロックダウンと都市封鎖は微妙に異なるので、誤解を避けるための言葉選びで、不安を煽りすぎないための狙いでは」という声が寄せられている。

 政治家が進んで使った専門用語だけに、狙っている効果はおそらくそれだけではないだろう。漢字だとインパクトが強すぎるというのももっともだが、そこで細かな説明が必要になる。言い方や言い回しによってはつっこまれたり追及されることもあるが、専門用語を使えばその必要はなく、言葉使いを気にしなくてもすむ。微妙なニュアンスの違いも専門用語を使えば説明する手間は省けるし、逆にマスコミがこぞって用語の解説を始めてくれる。マスコミが注目すれば、緩んできた世間の自粛ムードを引き締める効果もあるだろう。

 さて、自粛はついに東京五輪の延期にまで及びそうだ。今夏が中止となれば、安倍首相も小池都知事も支持率低下がオーバーシュート、求心力をロックされ、首相率いる政権も都知事率いる都政もダウンしかねない。果たしてこれからどうなるのか? …新型コロナはいろんな意味で怖い。

関連記事

トピックス

いよいよ成年皇族としての公務が始まる悠仁さま(写真/共同通信社)
《「父子相伝がない」の指摘》悠仁さまはいつ「天皇」になる準備を始めるのか…大学でサークル活動を謳歌するなか「皇位継承者としての自覚が強まるかは疑問」の声も
週刊ポスト
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヒグマ対策を担っていた元レンジャーが語る知床の現実(イメージ、時事通信フォト)
《相次ぐヒグマによる死亡事故》元レンジャーが語った“共生神話のウソと現実”…「人の汗で安全が保たれていただけ」“車と人”にたとえられるクマと人間の関係
週刊ポスト
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《「めい〜!」と親しげに呼びかけて》坂口健太郎に一般女性との同棲報道も、同時期に永野芽郁との“極秘”イベント参加「親密な関係性があった」
NEWSポストセブン
すべり台で水着…ニコニコの板野友(Youtubeより)
【すべり台で水着…ニコニコの板野友美】話題の自宅巨大プールのお値段 取り扱い業者は「あくまでお子さま用なので…」 子どもと過ごす“ともちん”の幸せライフ
NEWSポストセブン
『週刊文春』からヘアメイク女性と同棲していることが報じられた坂口健太郎
《“業界きってのモテ男”坂口健太郎》長年付き合ってきた3歳年上のヘアメイク女性Aは「大阪出身でノリがいい」SNS削除の背景
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン
卒業アルバムにうつった青木政憲被告
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「ごっつえーナイフ買うたった 今年はこれでいっぱい人殺すねん」 被告が事件直前に弟に送っていた“恐怖のLINE”
NEWSポストセブン
独走でチームを優勝へと導いた阪神・藤川球児監督(時事通信フォト)
《いきなり名将》阪神・藤川球児監督の原点をたどる ベンチで平然としているのは「喜怒哀楽を出すな」という高知商時代の教えの影響か
週刊ポスト
容疑者のアカウントでは垢抜けていく過程をコンテンツにしていた(TikTokより)
「生徒の間でも“大事件”と騒ぎに…」「メガネで地味な先生」教え子が語った大平なる美容疑者の素顔 《30歳女教師が“パパ活”で700万円詐取》
NEWSポストセブン
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン