国内

「校則をなくした公立中学校」校長が卒業生に贈った言葉

生徒の自由を尊重することでいい学校を作り上げた校長の西郷孝彦さん(撮影/浅野剛)

「校則をなくした学校」として知られる東京・世田谷区立桜丘中学校では、新型コロナウイルスの影響で規模は縮小されながら、無事、卒業式が行われた。

 この日卒業を迎えたのは3年生184人。そしてもう1人、校長を務める西郷孝彦さん(65才)だ。

 在任したこの10年間で登校時間を自由にしたり、服装を自由にするなど数々の改革を行った西郷さんは、この3月で教員生活を終える。4月2日には、教育評論家の尾木直樹さん、麻布学園理事長の吉原毅さんとともに、新書『「過干渉」をやめたら子どもは伸びる』を上梓する予定だ。その西郷さんが卒業生への餞に贈った言葉とは?

 * * *
 入学式で先生がした話、覚えているかな? 映画『千と千尋の神隠し』で、千尋がカオナシと一緒に電車に乗る話です。途中の駅で千尋が大人になる瞬間があったよね。その瞬間が見たくて先生になったんだって。

 カオナシは顔がないから、笑ったり泣いたり、怒ったりできないんだよ。カオナシを見ていて、先生はかわいそうだなと思っちゃう。

 みんなはカオナシですか? 違うよね。笑いたいときは笑うし、泣きたいときは泣く。カオナシではありません。

 でも、もしかすると、ここに入学したときはカオナシだったかもしれない。きみたちにとって、まだよく知らない先生たちもカオナシに見えたかもしれない。ですが卒業する今日は、みんな自由に自分の思いや感情を顔や体に全体に表せる人になったとうれしく思っています。

 今日でお別れですが、3年間、本当にありがとう。先生ぐらい長く生きていると、“また明日!”と別れて、それっきり会えない人がたくさんいます。

 だから、最後に別れを大切にしましょう。ということは、これからの出会いも大切にしましょう。新型コロナウイルスがこうして流行り、いちばんつらいのは“会いたい人と会えないこと”だと思う。学校に来られなくなって、最初は“やった。学校が休みだ!”と遊んでいても、そのうち学校が恋しくなる。なんで恋しくなるのか。会えないからだよね、好きな人に。

 だから出会いを大切にしましょう。一生のうちで会える時間は、本当に短い。どんなに長くても100年はない。一緒にいられるのはせいぜい60年かな。今日あと少し、思い切り楽しんで、そして卒業してください。

※女性セブン2020年4月9日号

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン