安倍首相は「感染がいつ急拡大してもおかしくない」と話す(時事通信フォト)
「院内感染の特徴は高齢者が多いこと。そもそも通院したり、入院している患者の多くは持病を持つ年配の人たちです。医師や看護師などを媒介に、体力が低下し、持病を持つ高齢者から感染していきやすい」(医療ジャーナリスト)
高齢者施設での感染増加も不安材料だ。兵庫県伊丹市の介護施設「グリーンアルス伊丹」では利用者25人と職員7人の感染が確認された。家族を含めると施設に関連する58人が感染し、70代から80代の男女9人が亡くなった。
もちろん若年層であっても、徹底して感染対策を取ることは大切だ。ただ、60才以上の高齢者の感染拡大は、前出のデータの通り、その重症化リスクの高さから、命を守るためにさらに徹底的に防がなければならない。
さらに懸念されるのは、重症者が増えれば増えるほど、「医療崩壊」を招く恐れがあるということだ。
ヨーロッパの現状がその事実を物語っている。アメリカ、イタリアに次いで3番目に感染者が多いスペインでは、すでに医療崩壊が現実のものとなっている。
「感染者は9万人を超える勢いで、死者は7000人を超えました。死亡者は70才以上が多く、病院の集中治療室で治療を受けている患者の約7割は60才以上です」(スペイン在住ジャーナリスト)
スペインではフェリペ国王の親戚で、女性の権利や社会主義活動家として知られた「赤い王女」マリア・テレサ王女も新型コロナで死去。86才だった。
バルセロナのサンパウ病院に勤務する、呼吸器科医のダビド・デラロサさんが言う。
「病院には500床あるのですが、そのほとんどがコロナ患者で埋まっています。現在、1人の医師が8人ほどの患者を診ており、医師の数が足りないので呼吸器とは関係のない専門外の医師らが応援に駆けつけている状況です。
私が診ている一般患者の病棟は、本来、集中治療室にいてもおかしくない患者であふれています。あまりにも重症患者が多く、症状が改善しても12~24時間以内にぶり返してしまう。こんなにも絶望的なことはありません。二十数年間、この仕事をしていますが、こんなにたくさんの重症患者を短い時間で診たのは初めてです」
そうした状況でやむを得ず進むのが「患者の選別」だ。