国内

コロナに懊悩する42歳大手スーパー店員は誇り高き戦士だった

どれだけ買われても商品を積む(イメージ)

どれだけ買われても商品を積む(イメージ)

 2020年4月7日夕方、新型コロナウイルスの感染が急拡大している東京など7都県を対象に、安倍晋三首相が「緊急事態宣言」を行った。都市封鎖を行うものではないと強調されたものの、食品や日用品を扱う店舗では、宣言が出されるらしいと報道されてから混み合っていた。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた『ルポ 京アニを燃やした男』著者の日野百草氏が、今回は大手スーパーマーケットでチーフとして働く42歳男性の葛藤と覚悟についてレポートする。

 * * *
「ロックアウトでも緊急事態宣言でもいいから早く出して欲しい、もう限界です」

 4月5日、外出自粛令で閑散とした都内、中央線ガードそばにある小さな公園のベンチに、大手スーパーマーケットチェーンの正社員、近藤仁さん(42歳・仮名)はヨレヨレのシャツに膝のテカったスラックス姿で座っていた。彼とは私が進めている子なし夫婦の企画で彼の奥さんに協力してもらった縁で知り合ったが、誰もが知っているスーパーのチーフ(主任待遇)である。自粛だ、控えろ、外に出るなと国も自治体も大多数の国民も声を上げているというのに、こうして出社している近藤さん、そして私。

「このご時世にほっつき歩いてと言われたりするけど、俺だって働きたいわけじゃないし家で引きこもっていたい。でも会社が許さないしこの仕事をしてたら無理ですよ」

 好きで取材している私はともかく、チーフの近藤さんはこの非常事態でも、本人の意思と関係なく店に出社しなければならない。新宿駅からしばし歩き、大通りの開いている店舗を見てみたが、コンビニの店員も、ハンバーガー屋のクルーも、駅員も、病院のスタッフも、工事中の作業員も警備員も、みなコロナの危険と背中合わせに働いている。いや、事ここに至っては、働かざるを得ない、働かされていると言っても言い過ぎではないだろう。

「俺である必要はないんですよね。なのに会社の売り上げ達成のためにコロナで死ぬなら、俺の人生なんなんですかね」

 憔悴仕切っている近藤さん。1984年のアニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は廃墟となった町が舞台だったが、コンビニだけはどこからともなく商品が入荷され、物に溢れていた。そこに店員こそいなかったが、35年を経たリアルの日本では疫病禍の都市でも店員が配置されている。満員電車も相変わらずで、話題のテレワークなど国土交通省の抽出調査によれば12%程度、現実はアニメよりシュールだ。

「コロナ罹ってるかわからない連中を相手に毎日物売らなきゃいけないなんて、怖いなんてもんじゃない。給料に見合わない」

関連キーワード

関連記事

トピックス

司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
横山剣氏(左)と作曲家・村井邦彦氏のスペシャル対談
《スペシャル対談・横山剣×村井邦彦》「荒井由実との出会い」「名盤『ひこうき雲』で起きた奇跡的な偶然」…現代日本音楽史のVIPが明かす至極のエピソード
週刊ポスト
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン