純お笑い番組が求められるきっかけとなったのは、やはり偉大なコメディアン・志村けんさんの訃報。追悼番組の放送中ネット上には、「悲しいのに笑ってしまう」「笑っているときは不安を忘れられる」などの称賛が相次ぐなど、純お笑い番組の魅力を認識した人が多かったようです。
ところが、純お笑い番組が見たくても、「特番以外ほとんど放送されていない」のが現実。実際、志村さんの追悼特番放送時には「今はこういう番組がないから再放送してほしい」、『ザ・ドリームマッチ』の放送後にも「もっとネタ番組が見たいけど無理だろうな」などの声が見られました。
視聴者が再放送を求めたり、あきらめたりするのも無理はありません。各局が「視聴率優先」「コンプライアンス重視」で番組制作を進めた結果ゴールデンタイムは、生活情報番組、ひな壇トーク番組、クイズ番組、街ぶら番組ばかりになっていました。『有吉の壁』がレギュラー化された早々から盛り上がっているのは、そんな状況に失望していた人々がいかに多かったかを物語っています。
そこで注目したいのが、現在ネット上では芸人たちによる“ギャグつなぎ”(ギャグリレー)。ネット上だけでなく、テレビの情報番組に取り上げられるなど盛り上がっていますが、『有吉の壁』と似ている点があることに気づいたのです。
その似ている点は、「数十秒に1ネタという短さ」「ハイテンポで次々に見られる手軽さ」「バランスや質をあまり気にしないおおらかさ」の3点。これは「『有吉の壁』とギャグつなぎがいかにシンプルなコンテンツであるか」を物語っています。暗いムードに覆われている現在は、両者のように作り手たちの作為的な構成や演出が少ないほうが、「何も考えずに楽しめる」「暗い気分を吹き飛ばせる」のかもしれません。
現在はテレビをつければ、各局が朝から夜まで新型コロナウイルス関連の情報ばかりで視聴後に重苦しさが残りがち。その点、純お笑い番組のあとに残らないカラッとした笑いが視聴者の心を軽くしているのではないでしょうか。
◆ロケ休止でも期待感を抱ける理由