◆コロナ以前にはもう戻れない

 俊太さんからの連絡がこの時期でなかったら、元彼に一瞬ときめいただけで、二人の再会は終わっていたかもしれない。美咲さんの人生にとって結婚は大きな目標であり、通過点であるからだ。もちろんそれは今も変わっていないけれど、危機が眼前にあるいま、コロナ以前には戻れないと美咲さんは考えている。

「最近、話す話題もなくなりました。彼は私に、コロナのことばっかり考え過ぎだ、普通の生活を送ったほうがいい、って言うんです。コロナが落ち着いたらまた元に戻るよ、とか。なんてのんきな人だろうと、唖然としてしまう。いま、いちばん大事なのは生き延びることですよね。平時であれば、一緒に生活をするに何の不満もない、いい彼氏であることはわかっているんです。でも、非常時を共有できる気がしない。人生にはまた危機が訪れるかもしれないから、その時に一緒に戦っていけるパートナーではなないと感じているんです」

 耕太郎さんへの気持ちが冷めるのと反比例して、俊太さんへの思いが募っているという。危機が炙り出したのは、二人の価値観の違いだけではなく、美咲さん自身の本当の気持ちだったのかもしれない。
(※名前はすべて仮名です)

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