この状況を反転するためには、発想の転換が必要である。つまり、将来が不安だからこそ、諦観するのではなく「稼ぐ力」を身につけるべきなのだ。昇進・昇給が望めないなら、高収入を得るためにスキルを磨いたり、AI(人工知能)やロボットに代替されない能力を身につけたりして、ステップアップを目指す―そうすることで、自分の未来を明るく変えていくべきだと思うのだ。

 実際、私が学長を務めている「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学・大学院」の学生は、新たに身につけたスキルやブラッシュアップした能力で、在学中に3分の2が、より高い収入が得られる企業に転職している。そういう努力をしないと、人生は改善しないし、豊かな生活も手に入らないのである。

 新型コロナウイルス問題で、フリーランスや自営業者は一挙に窮地に立たされているが、多くの企業や組織もピンチに直面している。その中で自分が生き残っていくためにどうすべきか、自分なりに考えて行動に移さなければならない。

 そこでヒントになるのは、日本人は「見える化」された世界では強いということだ。これまでたびたび述べてきたように、スポーツ選手や芸術家など、文部科学省の学習指導要領に基づいた教育の埒外では、多くの日本人が世界で大々的に活躍している。

 料理人もそうだ。ミシュランガイドの星付きレストランは、国では日本、都市では東京が世界で最も多い。彼らは常に研鑽・努力を怠らず、その日仕入れた食材に応じて最大限の創意工夫を凝らし、世界トップレベルの料理に仕上げている。これはAIには絶対にできない高度な技である。

 今はミシュランの星付きも含めて飲食店は軒並み危機的な状況に直面しているが、日本の料理人のイマジネーションや構想力とスキルがあれば、必ず生き残っていけるはずである。それは他の業種・業界にも共通するアナロジーなのだ。

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