私たちの世代がアメリカに「追いつき追い越せ」と努力したのも、前述したTVドラマで人生の目標=強く憧れる具体像が「見える化」されていたからだ。言い換えれば、若者たちがそういう目標を持ってアンビションを抱けるようになるかどうかが「低欲望社会」から脱するカギとなる。
したがって、私も含めた上の世代がやるべきことは、若者たちに「憧れ」を持たせる教育への転換にほかならない。新型コロナ禍で世の中が暗澹たる状況になり、いっそう若者たちがアンビションを持てなくなっている今こそ、それが極めて重要になっているのだ。
●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年5月1日号