東日本大震災では引きこもる部屋を奪われた(時事通信フォト)

東日本大震災では引きこもる部屋を奪われた(時事通信フォト)

 未曾有の危機は、今まで何を言っても自室から出てこなかった息子の意識さえ変えた。9年前、東日本大震災をきかっけに、同じように自分の部屋から外へ出た“息子”がいた。

 中学の頃に両親の離婚がきっかけで引きこもりとなったが、現在は建設作業員として働いているという福島県いわき市在住の幸田祐樹さん(仮名・20代)はいう。

「成人する直前に、東日本大震災が発生し、自宅の近くまで津波が押し寄せました。たくさんの人が亡くなり、家や仕事を失いました。僕はまだ家に引きこもっていて、母親と二人暮らし。離婚で僕を不幸にした母親を困らせたいという気持ち、惨めな気持ちにさせた両親への復讐みたいな感覚があったんです。しかし母親は僕のために炊き出しに並んだり、いろんなところを駆けずり回ってお金を借り、食べ物を持ってきてくれましたね。そういうのを見ていると、引きこもりなんてバカバカしくなってきて、外に出て後片付けのボランティアをやるようになりました」

 思えば「引きこもり」など、世の中が平和で、金のある親がいないとできない。平和でなくなり、親にも金がなくなると、引きこもりは真っ先に死ぬしかない。そういった危機感を、幸田さん自身が感じたのかもしれない。

「普通に生活していると、誰かと自分を比較して憂鬱になったり、やる気がなくなって投げ出しちゃう。それは自分がやらなくても、身近な誰かがやってくれる、世話してくれるからなんです。今、引きこもりを続けている人でも、親や家族が危機的状況になれば、自分にできることは何か、嫌でも考える日が来ます。誤解を恐れずにいうと、これ以上のきっかけはありません。頑張りたいけど、普通の生活をしたいけどその資格は自分にはない、という自己否定なんかやってる場合じゃないんですから」(幸田さん)

 新型コロナウイルスの影響で、世界中の人々たちが「生き方」や「常識」について考え直し始めている。極端例かもしれないが、生きる力を取り戻す人々だっている。コロナ禍後の世界は人間が決めるのだ。

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