不透明な資金の使い方が指摘されている尹美香理事長(時事通信フォト)
挺対協と行動を共にしている元慰安婦は数人とされている。李容洙氏は同団体と行動を共にしていた代表的な一人で、広告塔的な役割も果たしてきたが、前述のように反乱を起こした。つまり挺対協は元慰安婦から背を向けられ、存在のバックボーンを失いつつあるのだ。
挺対協は30年あまりも慰安婦支援に取り組む市民団体として、これまで韓国内では絶大な発言権を持ってきた。水曜集会で日本政府を糾弾する“反日団体”としても有名で、特に日本政府が慰安婦問題の解決に乗り出そうとするたびに、それを妨害するかのような活動を続けてきた。
李容洙氏に続き、その実態を暴く告発の手紙を文議長に送ったのが、前述した金紅玉氏だった。手紙にはこうも書かれている。
〈挺対協の尹美香は、お金をもらえないようにした。(中略)彼女はこうも電話で言いました。『和解・癒し財団のお金をもらっていないハルモニ(おばあさん。元慰安婦のこと)に、別途、挺対協から1億ウォンずつあげる』〉
じつは私は、拙著『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)の取材の一環で、金紅玉氏を取材したことがあった。その経緯もあり、彼女の手紙を入手することが出来た。取材を行った2018年当時、金紅玉氏は私にこう話していた。
「日韓合意の話を聞いたときは、『ありがとうございます』という気持ちでした。(日本が拠出した)10億円は日本国民の税金だから日本国民にも感謝しています。辛い人生だったけど、支援金ももらって少しだけ心が軽くなった。多くのハルモニは、市民団体の外にいることを知って欲しい」
元慰安婦の本当の声は、市民団体によって歪められてきたのではないか。
◆取材・文/赤石晋一郎(『韓国人、韓国を叱る』著者、ジャーナリスト)