こうした治療によって多くの性犯罪常習者の社会復帰を支えた原田教授が強調する。
「治療を経て依存症を克服することで就職先が見つかったり、別居していた家族と同居するようになるなど、患者が自分の人生を取り戻したり、新しい人生を切り開けるようになることが治療の最終的な目標です。そうすることで,確実に再犯が抑止されるようになります。このように,痴漢の常習者を科学的に治療することは、性犯罪のない安全な社会をつくることにつながります。痴漢を病気ととらえることに批判や反発があることは承知していますが、痴漢を治療することが社会全体を利する面を持つことも知ってほしい。それとともに,被害者のケアも忘れてはいけないことは言うまでもありません。わが国ではこれがまだまだ不十分です」(原田教授)
法務省の統計によれば、痴漢の同種再犯率は執行猶予者で約30%、刑務所出身者で約50%だが、痴漢外来で治療を終えた患者の再犯率は3%にとどまる。この事実をもとに、痴漢についての議論が進むことを期待したい。
●取材・文/池田道大(フリーライター)