国内

満員電車復活で「痴漢」の懸念 痴漢外来での治療法とは

5月25日の「緊急事態宣言」解除後、初めての朝を迎えた新宿駅の人波(時事通信フォト)

 緊急事態宣言の全面解除とともに、6月から通常の勤務体制に戻るという人も多いのではないか。これから少しずつ、通勤ラッシュの満員電車が戻ってくることになる。そこで懸念されることのひとつが痴漢の増加だ。警視庁の調べでは、昨年都内で検挙した痴漢(迷惑防止条例違反)は約1780件で、うち64%が電車や駅構内で発生していた。東京では1日あたり3件強、駅や電車で痴漢が検挙されている計算になるが、被害者である女性が泣き寝入りしているケースがあることを考えると、実際の発生件数はそれよりもずっと多いと見られる。初夏を迎え肌の露出が増えるいま、女性を狙う卑劣な性犯罪である痴漢問題について改めて考えてみたい。

 痴漢の常習者を対象に「治療」を行っている医療機関があることはあまり知られていない。痴漢などの性犯罪や性的問題行動をやめられない人たちを対象にした「痴漢外来」だ。10年間で500人を超える痴漢などの性犯罪を含む性的問題行動を治療してきた筑波大学人間系教授の原田隆之氏(保健学博士。臨床心理学や犯罪心理学などが専門)が指摘する。

「痴漢や盗撮などの性犯罪には、すべてではありませんが「性的依存症」であると考えられるケースがあり、そのようなケースでは処罰に加えて治療が必要です。もちろん痴漢は被害者のいる犯罪であり、加害行為の責任が問われるべきであることは間違いありません。しかし、痴漢を何度も繰り返す人のなかには、自分の意思ではどうしても我慢できず、やめたくてもやめられないという人がみられます。このため痴漢は再犯率が高く、刑罰が再犯防止に結び付いていません。

 こうした人々を痴漢外来で科学的に治療することにより、再犯を抑制することができます。痴漢外来の目的は、あくまでも性犯罪のない安全な社会をつくることです」

 依存症とは何らかの物質や行為などにのめり込み、やめたくてもやめられなくなる症状を中心とした病気である。アルコールや薬物の依存症が精神や体を壊し、ギャンブル依存症が家計を破壊する一方、痴漢は直接の被害者がいる犯罪であり、法に則った処罰が求められる。

 原田教授は都内の精神科病院で痴漢外来を受け持つ。患者の大半は痴漢と盗撮がやめられない人たちで、少数だが強制わいせつなどの暴力的性犯罪を起こした人や小児性愛者などがいる。100%男性で30~40代が多く、実際に刑務所を経験した人もいる。

 痴漢外来では、どのような治療を行うのか。まず大前提となるのは、「自分を信じないというルール」を課すことだという。

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン