国内

麻生財務相の「民度発言」は王様のメンタリティから生まれた

麻生太郎氏は今年の9月で80歳になる(時事通信フォト)

 政治家は言葉に責任を持つべき存在である。失言か否かをめぐって論争にもなっている一件について、コラムニストの石原壮一郎氏が発言者のメンタリティについて考察した。

 * * *
「(他国の人から)お前らだけ薬を持ってるのか、ってよく電話がかかってきたとき、私どもとしては、これ、そういった人たちの質問には、『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、いつも、みんな、絶句して黙るんですけれども。このところ、その種の電話もなくなりましたから、何となく、これ定着しつつあるんだと思います」

 4日の国会質疑で麻生太郎副総理・財務相が、政府の新型コロナ対策についての質問を受け、日本の死亡率の低さを強調しながら上のように答えました。これまでにも数えきれないほどの失言を繰り出してきた麻生氏ですが、今回もかなり強烈です。やり取りを報じた記事を読んだ人の多くは、マスクの下で開いた口がふさがらなかったに違いありません。

 いかに麻生氏と言えども、さすがに国会の場で適当なハッタリをかますわけはないので、副総理に電話できるぐらい偉い立場の他国の人たちに、実際にこう言ったのでしょう。ああ、なんとも居たたまれない気持ちです。「日本人として恥ずかしい」という言葉は、こういう時に使えばいいのでしょうか。

 得意気にここまで失礼なことを言われたら、そりゃ誰だって絶句します。電話がなくなったのは、きっと「この人と話してもしょうがない」という認識が定着したから。もし仮に、いや実際には絶対に言わないでしょうけど、6月4日の時点で死者数をゼロに抑えているベトナムの首脳が、麻生氏に同じことを言ったらと想像してみましょう。上のセリフがいかにとんでもないか、ゾッとしつつ実感できるはずです。

 もちろん、日本に住んでいる人たちは、政府のドン臭さをカバーする勢いで十分に頑張りました。全国的に「緊急事態宣言」が解除され、今のところ感染の拡大が抑えられているのは、ひとりひとりが全力で耐えたから。大いに誇りに思いましょう。ただし、日本に限らずどこの国の人も頑張っているし、そこに優劣はありません。

 政治家になって40年以上、かつては総理大臣まで務めた「政界の重鎮」にも関わらず、麻生氏はなぜこんな個人的な“民度”が疑われる発言ができてしまうのか。今年の9月で80歳ですが、同年代やそれ以上の年代でもきちんと活躍してらっしゃる人はたくさんいるので、きっと年齢のせいではありません。

 麻生氏ならではの状況となると、財閥の家に生まれて父親が設立した小学校に通い、30代で政界に入り、総理大臣になったり財務大臣になったりしつつ、派閥の会長を務めているということでしょうか。いわば、怖いものなど何もない「王様」の状態です。

「王様」に対しては、誰も「それは違います」「それはヘンです」なんて注意できません。長年にわたって自分をおだててくれる人だけに囲まれる状態が続くと、自分の考えを疑ったり発言や行動を反省したりということができなくなりそうです。まして下々の声なんて、ハエが飛んでるぐらいにしか感じないでしょう。ちなみに、マスクの正しい着け方も誰も教えてくれないようです。

関連記事

トピックス

かりゆしウェアのリンクコーデをされる天皇ご一家(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《売れ筋ランキングで1位&2位に》天皇ご一家、那須ご静養でかりゆしウェアのリンクコーデ 雅子さまはテッポウユリ柄の9900円シャツで上品な装いに 
NEWSポストセブン
注目度が上昇中のTBS・山形純菜アナ(インスタグラムより)
《注目度急上昇中》“ミス実践グランプリ”TBS山形純菜アナ、過度なリアクションや“顔芸”はなし、それでも局内外で抜群の評価受ける理由 和田アキ子も“やまがっちゃん”と信頼
NEWSポストセブン
中居、国分の騒動によりテレビ業界も変わりつつある
《独自》「ハラスメント行為を見たことがありますか」大物タレントAの行為をキー局が水面下でアンケート調査…収録現場で「それは違うだろ」と怒声 若手スタッフは「行きたくない」【国分太一騒動の余波】
NEWSポストセブン
定年後はどうする?(写真は番組ホームページより)
「マスメディアの“本音”が集約されているよね」フィフィ氏、玉川徹氏の「SNSのショート動画を見て投票している」発言に“違和感”【参院選を終えて】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
皇室に関する悪質なショート動画が拡散 悠仁さまについての陰謀論、佳子さまのAI生成動画…相次ぐデマ投稿 宮内庁は新たな広報室長を起用し、毅然とした対応へ
女性セブン
スカウトは学校教員の“業務”に(時事通信フォト)
《“勧誘”は“業務”》高校野球の最新潮流「スカウト担当教員」という仕事 授業を受け持ちつつ“逸材”を求めて全国を奔走
週刊ポスト
「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン