背中の痛みは身体の危険信号
◆すい臓がんはズシンとした痛みが
具体的に、背中に兆候が表れる病気にはどのようなものがあるのだろうか。菊池さんは、特に恐ろしい病気として「すい臓がん」をあげる。
「すい臓は胃の裏側にあるため、背中にズシンとした重い痛みを感じるのが特徴です。ただし、初期のすい臓がんは自覚症状がありません。背中に痛みを感じるのは、がんがある程度大きくなり、すい臓からまわりの臓器に広がっていることを意味しているのです」(菊池さん)
千葉大学医学部附属病院総合診療科科長の生坂政臣さんも声をそろえる。
「すい臓がんの場合、腹痛を訴える人が多いですが、がんがすい臓の中央から尾部にできると痛くなるのは腰の上のあたり。がん全般にいえることですが、ある日急激に痛み出すのではなく、違和感から始まって、週や月の単位で少しずつ悪化していきます。特に夜中寝ている最中に痛みで目が覚める場合は、すぐに医療機関を受診してください」
骨にできるがんである脊椎腫瘍も、背中の痛みが兆候であることが多い。菊池さんが言う。
「背骨をつなぐ役割を果たす脊柱管にできるがんで、すい臓がんと同じく、ズシンと重く感じる痛みがあります。背中だけでなく、足にも痛みやしびれが出るのが特徴です。普段とは少し違う痛みに加えて、足にも症状が表れたら、見逃さないでほしい」
食道がんや逆流性食道炎の場合にも、背中が痛くなるケースがある。菊池さんが続ける。
「逆流性食道炎と食道がんの初期の症状はほぼ同じで、逆流性食道炎を疑って胃カメラ検査を受けたら、食道がんが見つかるということもあります。のどや胃に症状が出ることが多く、のどの裏側、背中の上部にしみるような痛みを感じる場合もあります。痛みがあり、かつ飲み物や食べ物を飲み込みづらい症状もあるならば、一度胃カメラ検査を受けることをすすめます」
がんと並んで菊池さんが「頻度の高い病気」としてあげるのは、腎臓に細菌が感染する腎盂腎炎だ。
「腰の上あたりを軽く叩いただけでも痛みがあり、38℃以上の高熱が出ます。初期症状は風邪と似ていて気づきにくいのですが、放っておくと命にかかわることも。熱が出て背中の痛みがあれば、腎盂腎炎の可能性を疑って、早めに病院に行ってほしい」(菊池さん)