これまで安倍政権の下では、政権に批判的な言動をすると安倍首相の熱狂的ともいえる支持者などからネットで激しくバッシングを受け、ものが言えなくなることがよくあった。今回の芸能人らの政治的発言に対しても、「ファンを裏切るのか」「法案をどこまで理解して反対しているのか」といった批判があがったが、流れを止めることはできなかった。
当然だろう。ちょっと考えれば、的はずれな批判だとわかるからだ。第一、「法案を理解していない」という点では弁護士資格を持つ森雅子法務大臣も同じだった。森法相は国会で法案について質問されると何度も答弁に困って役人に助けを求め、発言の修正を重ねた。外出自粛やテレワークで自宅にいる機会が多かった人は、テレビの国会中継でその様子を見た人も多いだろう。
大臣もわからない法案を全部理解してから反対しろなどと言われたら、国民は声を上げられなくなってしまう。おかしな批判だとすぐ見破った。
そもそもこの法案の政治的意図は、首相寄りとされる黒川弘務・東京高検検事長(当時)を特例で定年延長して留任させようというもので、そうした不透明な人事をごまかすためにコロナ自粛のドサクサでの法改正を狙った。国民が声を上げたのは法律の中身より、その政治手法に胡散臭さを感じ取ったからだ。国民の嗅覚は正確だった。
このツイッターデモをきっかけに、新聞各紙の5月の世論調査では安倍内閣の支持率は軒並み大きく下がり、朝日新聞は29%、毎日新聞は27%をつけた。政界では支持率20%を割れば「退陣水準」といわれる。その水準に近づいたのである。
※女性セブン2020年7月23日号